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第457話

「この絵本は少々特殊でな。だからこそ母上はこれを兄上と私に贈ってくださったのだろうが、この歳になってもまだ、母上が願われたことがわからない。いうなれば迷子、であろうか。ずっと見ないふりをしてきたのだから、ますます答えから遠ざかったかもしれないがな」  クツリ、と先程とは違う、自嘲するような笑みをサーミフは口元に浮かべる。どう応えたら良いかわからなくて、凪はせめてと茶を注ぎ甘い菓子をサーミフの前に置いた。ジッと、サーミフの目が菓子を見つめる。どれほどそうしていただろう、ふと顔を上げた彼は凪を手招いた。 「ナギ、こちらにおいで。これは少々特殊ではあるが、特別な本ではない。ディーディアで幼少期を過ごした者であれば大半は知っているようなものだ。ナギも知っているに越したことはないだろう。良い機会だから読んでやろう」  スラスラと淀みなく、ごく普通の提案をしているように見える。否、ごく普通の提案ではあるのだろう。最後の言葉を除けば。 「……私がお読みいたしましょうか?」  必要ならば新しい絵本を買って読むと言いたいところだが、王妃の答えに辿り着けないと言っていることから、サーミフ自身もまた探すために読みたいのだろうと思う。きっかけとして凪に教えるという名目が欲しいのかもしれない。それは理解したいと思い、また協力したいとも思う。だが読むのは凪で構わないはずだと提案したが、サーミフはすげなく却下した。 「流石にそれは恥ずかしい」 「私にも羞恥心は存在するのですが」  もうディーディアにきて何年も経っている。読み書きだってディーディア人と遜色ないだろう。ディーディアに来たばかりの頃ならともかく、今の自分が幼子のように絵本を読み聞かされるというのは、想像しただけで叫んで暴れたいほどに恥ずかしい。しかしそんな凪のことなどお構いなしに、サーミフはヒョイと車椅子から抱き上げた。

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