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第458話

「わッッ!」  急なそれに凪は思わずサーミフの首に腕を回してしがみつく。落ちたらどうしようという防衛反応は時に立場など忘れさせるものだと凪はこの時理解した。 「そう怯えずとも落としたりしない」  そんなことを言いながらサーミフは数歩先にあるクッションがたくさん置かれている場所まで移動し、そっと凪を分厚い絨毯の上に下ろした。そしてティーカートにあるトレーに茶と茶菓子を乗せて戻ると、サーミフは徐に凪の後ろに座る。なんだか嫌な予感しかしない。 「さて、いくぞ。〝とある おくにの おうじさま〟」  凪の抗議などなんのその。サーミフは自らの足の間に凪を座らせると、後ろから手を回して凪の真正面で絵本を開きだした。流石は王子サマ、人の話など聞きやしない、と凪は半目になりながらも絵本に視線を落とした。今の凪は車椅子がなければ自由には動けないし、主人を押し退けて抱え込まれている状況を脱出することも使用人としてはできない。こうなってしまっては諦めるのが得策だ。自らの思う通りに動きもしない物事に対して諦めず抵抗し続けるのは時間と体力の無駄である。それに、と凪は柔らかな線で描かれる絵を見つめる。  ほんの少し、これがどんな話か興味があった。

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