460 / 477
第460話
「――王子様はお友達が皆、本当の笑顔を王子様に見せたことがないと気づいてしまいました。大人たちに言われたから、一緒にいるだけ。庭で走り回った時も、手遊びをした時も、お勉強をした時も、楽しかったのは王子様だけでした。王子様は彼らをお友達だと思っていました。けれど彼らはそうではなかったのです」
本来であれば、お友達との間には何もないはずだった。庶民同士の子供なら、壁は無いはずだった。だが王子様の前はいつだって、大きな大きな壁が立ち塞がっていたのだろう。
身分という壁。大人の思惑という壁。きっと王子様は真摯にお友達と向き合っていたから、向き合ってしまったから、見えてしまった悲しい真実。
「王子様はこっそりと泣きました。その涙は誰も見ていません。だって王子様は、何でも持っている王子様でなくてはならないからです」
あなたは、泣きましたか? 凪はそう胸の内で問いかける。
「次に彼らが来た時、王子様は笑顔を見せました。一緒に遊んで、時間がきたらお別れ。いつも通りの光景になるように、王子様は努力しました。お友達になることを、王子様は諦めました」
あなたもまた、諦めてしまったのでしょうか。
「あの時から、王子様にお友達はいません」
偽りの笑顔を向けられる中で、あなたもまた諦めてしまったのでしょうか。
「いいえ、きっと最初からいなかったのです」
だからあなたは、探し続けているのでしょうか。
王妃様が願った答えを、絵本に託した想いを、ずっと、ずっと。
でも、未だにあなたは見つけられない。
ともだちにシェアしよう!

