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第462話
「――〝王子様、私はあの少年がどこで何をしているのか知っています〟そう言ったのは宮殿に昔からいる召使のおじいさんでした。おじいさんは王子様に言いました。〝あの少年は北の花畑にいます。王子様に一番綺麗な花をプレゼントするために〟」
一番綺麗な花。その身分に相応しいからではなく、一等喜んで欲しくて願った花。
「〝でも、あの少年は戻ってはこないでしょう。北の花畑は険しい崖の、その向こうにあります。子供が行けるような場所ではありません〟だから待つのはおやめなさいと、おじいさんは王子様に言いました。王子様は何も言うことができませんでした。だって王子様は一度もお花が好きだと言ったことはないのです。大好きだけれど、どんな宝石よりも好きだけれど、それを誰にも言ったことはありませんでした」
どうして気づいたのだろうと、きっと王子様は不思議に思ったことだろう。どうして王子様が好きだと一度も口にしたことのないものをプレゼントするために危険な場所へ行ったのか。
「王子様はお部屋に戻りました。そして綺麗な花瓶に活けられた――」
ふと、サーミフの声が途切れた。今まで噛むことすらなくスラスラと読んでいたその声がフツリと止まる。どうしたのだろうかと凪がそっと見上げれば、サーミフは表情こそ然程変化は無いものの、その瞳が遠くを見るように揺らめいていた。
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