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第463話

 きっと、何かがあった。サーミフの心に燻る何かに、触れてしまったのだろう。だがわからない凪にはどうすることもできない。  このまま待つか。それとも声をかけるべきなのか。  違う。違う、と凪は頭に次々と浮かぶそれらを否定し続けた。  気遣いよりも、もっと必要なものがある。目を外らせるように急かすのではなく、どうしたのかと問いかけるように手を差し出すのでもない。知らぬふりをし続けることも、あるいは凪が続きを読むのも違うだろう。だから、そう、だから……。 「…………っ」  そっと、凪はサーミフの胸に背をもたれさせた。慣れていなくて少し強張ってしまったが、トン、とほんの少し身を預ける。触れているのは、ほんの一部だ。それでも少しは人の温もりが互いに伝わる。ハッとしたサーミフは凪を見たが、凪は視線を上げることはしなかった。ただひたすらに絵本に描かれた挿絵を眺め続ける。その意味を理解したのだろう、サーミフは小さく吐息をこぼすと、片手で凪の頭を撫でた。 「――そして綺麗な花瓶に活けられた、白と薄桃の花を見つめました。これは庭に出た時、少年が王子様に似合うと言って庭師のお爺さんに分けてもらった花でした。きっとあの時のように、少年は王子様のために北の花畑まで行ってしまったのでしょう。王子様の頭の中で、あの少年は戻ってこないでしょうと言った召使のおじいさんの声が繰り返し聞こえます。少年はジッと、花瓶の花を見つめていました。――おしまい」

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