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第468話
「私は、王子様が諦めることに、慣れてほしくはないです。だって王子様も人ですから。幸せになっても良いし、たった一つを手放したくないと願っても良い。そう、思います」
綺麗な宮殿に住んでいようと、たくさんのお金を持っていようと、多くの人に傅かれ敬われようと、それが必ずしも幸せであるとは限らないだろう。
「どんな金銀財宝よりも大切なものがある」
それはサーミフに聞かせるというより、凪自身に呟いたものだった。チラとサーミフが凪を見る。凪はゆっくりと瞼を閉じた。
かつて、生まれながらにして持っていたモノ。
母に手を引かれたその時から失ったモノ。
嫌いになったモノ。
得たかったモノ。
「ナギ……」
「殿下、きっと、王妃様もまた、ご自身をハッピーエンドにするために必要なモノを、ご存知だったのでは?」
ピクリと、絵本を持っていたサーミフの指がほんの僅か跳ねる。ゆっくりと凪がサーミフを振り返った。
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