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第474話

 夫人の息子だからと特別扱いはできない。王子が一介の使用人を贔屓にして仕事に不平等を起こしてはならない。だから私からの助けを期待するな。使用人の服を着てサーミフの前に初めて立った時、彼はそう言っていた。当然だろうと凪は思っていたし、そこに何も感じなかったわけではないが、それでも不満や苛立ちを覚えることはなかった。凪は元貴族令息。立場ゆえの振る舞いを知っていたから、覚悟もしていた。けれどサーミフは凪が本当に困っている時、必ず手を差し伸べてくれた。放置されたことも、見なかったフリをされたこともない。凪がかける声を、サーミフは必ず立ち止まって耳を傾けた。助けは期待するなと言いつつ、いきすぎた悪意には睨みを効かせてくれた。彼の庇護がなければ、王の寵愛を受ける夫人の息子など、とうに死ぬか、息を殺して生きているかのどちらかでしかなかっただろう。宮殿は外で想像するほど優しい世界ではない。 「私は忘れっぽいですが、いただいた恩は忘れません」  貰ったものはたくさんある。もしかしたら凪が気づけていないものも、たくさんあるかもしれない。両手いっぱいに抱えても抱えきれぬほどに、サーミフは凪を気にかけてくれた。 「……あれしきのことを恩と言うとは、欲のないことだ」  呆れた、とばかりにサーミフは苦笑する。振り返ってもいないのにそんな彼の表情がありありとわかって、凪は微笑んだ。コホッ、と乾いた咳がこぼれ落ちる。 「口では冷たく聞こえることを言うのに、情の厚い方。先程殿下は王妃様をそう表現されました。やっぱり、殿下は王妃様に似ておられます」

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