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第482話
母の幸せの中に、もう凪は必要ない。凪だけが母のすべてではなくなった。凪がおらずとも、母は国王とナイーマに囲まれて笑っていることができる。
なら、なんのために凪はここにいる。何のために歯を食いしばって生きてきたのか。
「僕は、何のために――――ッッ」
貴族令息として生きてきたすべてが、あの日泡と消えた。そしてあの日から新たにひとつひとつを積み重ねた。
嫌だったものは山程ある。苦しみ、のたうち回り、何度鉄の味を感じながら涙を堪えたことだろう。それでもここには母がいるからと言い聞かせた。でも、もう隠せない。
母は、ナイーマと手を繋いでいた。隣には、国王がいた。身分など、そこには関係ない。穏やかに微笑み合うその光景は美しくて、幸せそうだった。母は、幸せそうだった。その時ふと、思ってしまったのだ。――じゃぁ、次は自分が消えることこそ母の幸せになるのでは、と。
もうどうあったって、母と凪は以前の関係には戻れない。ここにいる限り母は第三夫人で、凪は決して王族にはなれない。ただひたすらに、母の過去を象徴する存在。新しい世界にこびりつく影。がむしゃらに生きていた時には気づかなかったもの。全てが終わったのだと思った瞬間に、襲いかかってきたもの。自分は、いったい――。
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