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第485話

「庭に行く途中、王子様は異母妹とすれ違いました。いつもは幼さに似合わず取り繕った笑顔を浮かべているというのに、その日は本当に嬉しそうな顔をしていました。まるでずっと欲しかったものが手に入るとわかった瞬間のような、そんな笑顔でした。王子様はおかしいと思いました。何かが変だと。だが王子様は庭の方へ行きました。異母妹が帰ったらそれとなく何があったのかお母様に探りを入れようと、そんな悠長なことを考えていたのです。庭に行って、花を摘んで、お母様はどんな顔をするだろうなんて考えて。そんな王子様の目に映ったのは、真っ赤に染まったお母様の姿でした」  花が落ちた。サーミフの思いごと、落ちて無惨に散らばった。 「不思議だと、何かがおかしいと異母妹の異変に気づいていたのに、即座に行動しなかった。それが王子様の後悔であり、罪です。周りがどれだけ慰めようと、王子様は自分を許しませんでした。だから、疑うことにしたのです。少しでもおかしいと思ったなら疑え。疑って疑って調べ尽くせ。後で、なんてものは存在しない。そう言い聞かせてきました。そうすることで守れるものがあると信じ、あるひ目の前に現れたお母様にそっくりの女性とその息子も、最初から疑い続けました」  大きな手が凪の髪を撫でる。疑った子供に対するには、ひどく優しい手。でもこれは、なぜか出会った時から変わらない。 「側に置いておけば見張ることができる。怪しい動きがあればすぐに察知できるだろう。そんな理由で、母から離れることも、王族になることもできない、宙ぶらりんの子供を引き取りました。使用人として宮殿にいれば良いなんて、優しい声音に残酷さを隠して」  そうして子供に宮殿での居場所を与えた。思えば、それはきっと残酷な檻だっただろう。

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