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第486話

「目的が目的だったので、王子様は彼に何も期待していませんでした。使用人として、というのも建前だったのですから。けれど子供のうちは働かせられないと一室を与えて勉強をさせるようになって、様子を見るうちに王子様は彼がとても居心地悪そうにしていると気づきました。その時に何を思ったのか、もう思い出せません。可哀想、だったのか、それとも辛かろうという同情だったのか。抱いた感情は思い出せないというのに、あの日見た彼の顔が脳裏にこびりついて、離れることはありませんでした」  兎都から逃れてきた、どう見ても訳ありの貴族令息。ディーディア語もおぼつかない、今や寵愛を欲しいままにしている第三夫人の愛息子。けれど王族にはなれない、幼さゆえに使用人にもなれない、どこにも居場所を持つことのできなかった子供。 「少しでも疑わしいなら調べ尽くして罰せよ。しかしそうでない時の彼に王子様は何もしないと決めていました。良いことも、悪いことも。側には置くけれど、深く関わるつもりもありませんでした。けれどなぜでしょう、気づけば王子様は慣れぬ異国の名前をひとつ、幾度も口にして覚えました。覚えた名前は〝ナギ〟」  言葉がおぼつかなくとも彼がハッキリと聞くことのできるもの。ナギ、と呼べば、彼は必ず振り返った。

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