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第487話
「ナギが言葉を覚えられるようにと、王子様は絵本を渡しました。絵本が読めれば次は短編小説。その次は少し難しく長い小説。そして最後には論文のようなもの。きっかけなんて大層なものもないほどの、ただの気まぐれ。けれど最初に絵本を渡した数日後、柱の影からこっそりとこちらの様子を伺い、一人になった瞬間駆け寄ってきて、なのに目の前で立ち止まってはモジモジと言葉を探しながら辿々しく〝ありがとう、面白かった〟と言ってきた姿が忘れられず、新しい本を渡す度に拙くもディーディアの言葉で感想を言いにくる姿をいつしか待つようになりました」
まだまだディーディアの言葉を覚えている最中の彼が紡ぐ感想は本当に辿々しくて、単語は時折間違えていた。後から冷静に考えれば、きっと〝主人公は不器用で〟と言いたかったのだろうと予測はできたが、凪の口から〝主人公は不細工で〟と言われた時には流石に目を見開いて固まってしまったものだ。
「言葉もそれなりに覚えられた頃、成人した彼は使用人として働き出しました。けれどやっぱり警戒はするが期待はしていなかった王子様は変わらぬ日常が繰り返されるばかりだろうと思っていました。しかし、彼は王子様の予想を超えてきました」
生まれた時から傅かれる立場だった者がそう簡単に変わることはできないと思っていた。赤子でなかった以上、頭を下げることにすら矜持が傷つけられるだろうと。だから彼がするのは最低限だと思っていたのだ。
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