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第488話
「いつからでしょう、王子様の気分によって変わる、欲しい飲み物を何も言わずとも彼が用意するようになったのは。いつからでしょう、朝の湯浴みに使われる花や香油を、今日は何だろうと待ち望むようになったのは。朝の目覚めの時、意外と無遠慮に起こすその一瞬を楽しむようになったのは。――いつからでしょう、ナギと軽口を叩いては笑う日々が当たり前になったのは」
ハッと息を呑む声が腕の中から聞こえる。それに何を言うことはない。ただ優しく髪を撫でながら、その小さな頭を胸に抱いた。思い出すように遠くを見上げる。
母が生きていた時から、サーミフにとってこの宮殿は窮屈な場所だった。諦めて、彼らの望む姿を与えて。けれどそれは常に気を張る作業であったから、当たり前だがいつだって疲れていた。笑い合えるのは、母と兄だけがいる、小さな空間のみ。それ以外では完璧な王子様であれたというのに、サーミフの思いに反して兎都の小さな小さな使用人が来てから乱されてばかりだ。理想とは程遠いであろう醜態を見せ、作ったものではない笑顔を晒し、多くの人目がある場所で戯れるように言葉を交わした。
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