505 / 513

第505話

「これだけの金銭をもらって、さて誰にここへ送り込まれた?」  静かに落とされる問いに、ローラはビクリと肩を震わせた。キョロキョロと視線が泳いで、取り繕うこともできない。所詮その程度、とサーミフはため息を飲み込んだ。  仕えて短い使用人たちの目は誤魔化せるかもしれないが、長年仕える者や、サーミフのように宮殿で生まれ育った者の目は欺けない。ローラが身分を誤魔化すために揃えたすべてが、上流階級で育ったものではなく、〝上流階級に憧れた者が夢見るもの〟でしかないのだから。  ローラの生家が事業に成功して成り上がったということもあるのかもしれないが、それならばわざわざ危険を犯してまで凪を狙う理由がない。もっとも、サーミフが調べたところローラの生家はディーディアに程近い国の、貧しくはないが裕福でもないごくごく一般的な一市民だったようだが。 「……し、知りません」  唇を震わせながらローラはサーミフの問いにか細く答える。知りません、私は何も知りません、と。その瞳が何を見ているのかを悟って、サーミフは今度こそ小さくため息をついた。 「知らぬ存ぜぬでここさえのりきれば、その金貨や宝石で逃げることができるとでも? だが生憎、それらは贋金とイミテーションにしか私には見えぬがな」 「えっ…………」  よほど衝撃だったのか、取り繕うことも忘れてローラは目を見開く。ノロノロと近くに落ちている宝石を凝視した。

ともだちにシェアしよう!