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第509話
どこからか、お母様の声が聞こえる。
ボンヤリと揺蕩いながらその声を聞いて、思わず、ふふふ、と笑いが零れ落ちた。
夜眠る時、乳母が寝物語を聞かせてくれるけど、お父様が来ない日はお母様が寝物語を聞かせてくれる。お母様の優しい声で聞くのが好きだから、少しお父様を恨めしく思う時もある。
とおい、とおい、むかしの おはなし。
それは小さな冒険のお話し。お城のお話し。素敵なラブストーリーに、友情のお話し。――兄妹の、絆のお話し。
この宮殿には沢山の〝兄弟〟がいることを知っている。仲が良くない人も、素っ気ない人もいるけれど、それはきっとお母様が違うから。だって、王太子さまとサーミフさま、第五王子と第二王女、洗濯物を取りにくる双子の侍女、庭師の兄弟だって、みんな仲が良い。
他愛のない話をして、笑って、じゃあねって離れるけれど、いつの間にかまた側にいて。上の者は下の兄弟を名前か愛称で呼んで、下の者は上の兄弟を名前かお兄ちゃん、お姉ちゃんと呼ぶ。それはなんだか特別な感じがして、キラキラと輝いているように見えた。
いいな。いいな……。
あんなふうに、お兄様となれたらいいのに。
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