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第511話

 なんだか、とんでもない醜態を晒した気がする。  もう幾度目になるだろうか、そんなことを頭の中で考えながら凪はハァ、と深い深いため息をついた。林檎の皮を剥く手が止まって、その現状にもう一度深いため息が零れ落ちる。そんな凪の様子を、厨房にいる料理長とその弟子の男がチラチラと心配そうに見つめていた。 「ナギさん、どうしたんですかね?」  耐えきれなくなったのか、弟子の男が小声でそっと師匠である料理長に囁く。その問いかけに料理長はヒョイと肩を竦めた。 「わからんが、おそらくそう悪い理由でもないだろ。この離宮には限られた者しか入って来れんし、変な噂が入ることもない。宮殿であったような煩わしいことは無いはずだしなぁ」  そう言いつつも、料理長も気になるのだろう。チラと凪の方へ視線を向けてはヘニョリと眉を下げている。 「そういえば、さっきリアムさんに聞いたんですけど、殿下とナギさん、昨日は随分遅くまで話してたそうですよ」  心なしか瞳をキラキラと輝かせている弟子に、料理長はチラと凪の様子を確認してからペシッ、とその頭を叩いた。 「お二人の事情に何でもかんでも首突っ込むんじゃねえよ。そんな話を俺たちが知ってるってナギさんにバレた日にゃぁ、どうなるかわかったもんじゃない。ビックリしすぎて出てっちまったらどうすんだ。あの人、あんなか弱い見た目してるが、思い切ったらとんでもねぇ行動するんだぞ」  ディーディア人からすれば子供のような見た目をしている凪であるが、決して侮ってはならない。そんなことを言う師匠に弟子はほんの少し頬を膨らませて不満そうな顔をした。

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