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青空の下で笑う貴方と2
月瀬の顔が近づき、真稀は目を閉じてそれを受け入れた。
唇が触れ合って恐る恐る口を開けると、口付けが深まる。
「ん……っ、ん、ぅんっ……」
もっと近づきたくて背中に腕を回すと、体温が重なった。触れ合っている場所、全部が熱い。
舌が絡むごとに頭が痺れて、いろいろなことをまともに考えられなくなっていく。
頭の中のどこかでは恥ずかしいと感じていて、それなのに声が漏れるくらい夢中になっているのが不思議だった。
キスに酔ってぼーっとしている間に、服を脱がされる。
気付けば全裸になっていたことに慌てて「月瀬さんも」と、彼のワイシャツに手を伸ばしたが、上手くボタンを外せない。
真稀の震える手をそっとどけて、月瀬は自らのボタンも外していく。
その姿に見とれていると、服をベッドの下に落として同じように全裸になった月瀬が苦笑した。
「そんなに見つめられると、少し緊張するな」
「お、俺は、いっぱい緊張してます」
ボタンを外すこともできないくらい。
羞恥だけでなく、自分には不相応なのではないかと、逃げ出したいような気持ちも、まだある。
「でも」
それでも、月瀬が望んでくれるから。
「もっと、触って欲しい……です」
月瀬は、真稀の願いを叶えてくれた。
熱い掌と唇が、身体を辿っていく。
首筋、鎖骨、胸……月瀬が触れてくれると全て気持ちが良くて、真稀は切れ切れの声をあげて身を捩った。
気持ちがいい。でももっと直接的な刺激が欲しいような、もう少しこのまま浸っていたいような。
「…………っ、あっ?」
甘い葛藤にうっとりと身を委ねていた真稀だったが、彼の手が胸から腹に滑ったとき、なんだかくすぐったいような、たまらない感じがして、びくんと大きく体が跳ねた。
未知の感覚に困惑していると、反応が大きかったからだろう、同じ場所に更に刺激を与えられる。
「ふぁ……! つきせ、さ……っ、待っ……それ、あ、……へ、ヘン……」
腹を撫でられているだけなのに身体中が熱くなってきて、思わず彼の手を掴んだ。
「どうした。気持ちよくは、ないか?」
真稀の頬は紅潮して息は乱れ、中心は弾けそうなほど昂っていて、月瀬からしたら快楽に溺れているように見えるのだろう。
だが、これは性感帯を直接刺激されるような快感ともまた違っていた。
「あ……っあの……そこ、もらった精気が溜まるところで……っ、触ると、むずむずして……っ、ほしい、みたいな……感じが……っ」
体感を一生懸命説明すると、月瀬は「ほう」と興味深そうな顔になる。
「確かに、丹田は『氣』の集まる場所だとされているな」
医者が触診するように腹部を軽く押されて、ひくっと勝手に息が詰まった。
「ほんともう、そこ、だめ、です……って、あ、や……っあ」
過敏な反応が楽しいのだろうか。強弱をつけてしつこく撫でられて、泣き声をあげて首を振る。
体の奥が、欲しい、と声をあげていた。
性欲と食欲の境界があいまいになっていく。
身体中を満たすご馳走のことで頭がいっぱいになって。
微かに残る理性は、もっと普通に行為を楽しみたいのに、と小さく抵抗している。
しかし微かな抵抗は、本能という名の圧倒的欲望に、為す術なく吹き飛ばされた。
真稀は欲望に押されるまま、口を開く。
「月瀬、さん……っ欲し、い……っ」
欲しい、の意味を正確に捉えた月瀬に「満腹なのではなかったか?」とからかわれても、もう言葉遊びをするだけの余裕はない。
下手をすれば、心を虜にする異能を使ってしまいそうなのを必死に耐えながら、泣きべそで必死で懇願する。
「おねが……、つきせさんの、いっぱい、ほしい……っ」
言い終わるか終わらないかのうちに、やや性急に体がひっくり返された。
後ろをぐいっと開かれて、確認するように、指が内部を探る。
濡らしてもいないのにスムーズに飲み込まれていくが、それは本当に欲しいものではなくて。
「……これなら、そのまま挿れても大丈夫そうだな……。もしも、あまり辛いようなら言ってくれ」
何でもいいから早く欲しくて、真稀はガクガク頷いた。
腰を抱えられて、ぐっと熱塊を押し込まれて。
「あ……ぁ…っあ……っ」
灼熱が、奥まで到達する。
待ち焦がれていたと言わんばかりに、貪欲にキュッと食い締めてしまった。
背後で息を呑む気配がしたのもわからないくらい、とにかく欲しくて、どうしようもなくなっていて。
だから、月瀬がらしくなく激しく抽挿を始めても、ただ、悦びの声が漏れるばかりだった。
「あ……! あ! ゃあ、い……きもち、い……!」
突き上げられるたびに甘い声が飛び出る。
ずっと目の前に星が散っているくらい気持ちがいい。
けれど、真稀が本当に欲しいのはその先の。
灼き切れそうな熱が、身体中を駆け巡る。
それを散らそうとシーツに縋り身を捩ると、「そろそろ出すぞ」と月瀬の掠れた声が聞こえた、ような気がした。
応えて真稀も「はやく」とか言ったような気もするが、もう彼の言葉も自分の言葉も意識できていない。
中で、ずっと待ちわびていたものが、弾ける。
それは、慣れぬ身にはあまりにも過ぎた快感で。
満たされる余韻を味わうこともなく、真稀の意識はそこで途切れた。
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