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第4話
第4話 先輩、笑った
昼休み前。
午前の講義が終わって教室から出ると、廊下の端に瑛太が立っていた。
「先輩! こっちです!」
人目もはばからず全力で手を振る。ほんと犬かお前は。
「……お前、授業は?」
「終わりました! で、ランチ行きましょう」
「……別に一緒に行くって言ってない」
「言ってなくても行きます」
有無を言わせない笑顔で並んで歩き出す瑛太。
こうなるともう断るだけ体力の無駄だ。
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学食は混んでいて、二人掛けの席しか空いてなかった。
仕方なく向かい合って座ると、瑛太はトレーを置く前に俺の飲み物をストローごと覗き込む。
「それ、美味しそうですね。一口いいですか?」
「は? やだよ」
「じゃあ交換で!」
「交換って、お前の飲んだやつなんか……」
抵抗する間もなく、自分のカップを押しつけてくる。
仕方なく一口飲むと、甘ったるい味が広がった。
「どうです? 美味しいでしょう」
「……甘すぎ」
「甘いほうが、疲れとれますよ」
そう言って、満足げに俺のコーヒーを飲む瑛太。
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昼食後、購買でノートを探していたら、棚の奥に手が届かなくてちょっと背伸びした。
すると、後ろから瑛太の手がすっと伸びて、それを取ってくれる。
「はい、先輩」
「……ありがと」
「お礼、笑顔でください」
「は?」
「ほら、今ちょっと笑ったじゃないですか」
瑛太がにやりと笑って覗き込む。
……やばい、本当に少し笑ってた。
「笑ってない」
「うそ。見ましたから」
「……うるさい」
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帰り道、瑛太はいつもより静かだった。
何か言いたげに歩いていて、駅前でようやく立ち止まる。
「今日の笑顔、けっこう好きでした」
「……勝手に評価すんな」
「じゃあ、また笑わせに来ます」
言いたいことだけ言って、満足そうに去っていく後輩の背中を見送る。
頬のあたりが、やけに落ち着かない。
……なんで、あいつの前だと気が緩むんだ。
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