「見た目がゼロじゃねぇけど、それが全てな程単純じゃねーよ。……、お前こそ、わかりずら過ぎる」 　水野の低くて甘い声が近づいてきて、顎先に熱い指先が触れると唇にキスをされた。 　優しい唇はすぐに離れてしまい、水野の不安が滲み出た、震える瞳に見つめられる。 　気持ちを伝えたいって思うのに、――声が出てくれなかった。 　どうしたら良いのかわからなくて、目を伏せたくなったけれど、思い切って顔を上げて、きつく目を閉じて、勢いに任せてキスを返してみる。 　流生の唇が触れた先は唇とは少しずれた口角で、恥ずかしくも情けなくて、つい俯いてしまうと、水野の腕の中に引き寄せられた。 「あんま、可愛いことすんなよ」 　切羽詰まった声で耳元で囁かれる、熱を孕んだ水野の声に背中が粟立った。 　耳にぬるりとした感触がして、突然の事で身体が強張る。シャツの隙間から水野の手が入ってきて、脇腹を撫でられると身体が跳ね上がった。 　頬に触れていた水野の唇が下りてきて、熱い吐息と共に流生の唇に触れる。下唇を甘く啄まれ、そこに触れる濡れた感触に薄く唇を開くと、深く口付けられた。 　初めての感覚に、行き場のない手が無意識に水野の服を掴む。 　水野の舌が厭らしく口内を蠢き、流生の舌を攫っていく。強引なのに優しいキスは、水野としている事を実感させてくるようで、口内で混じり合う唾液さえ愛おしくて、全てを受け入れたくて、喉を鳴らした。 　ヒートで発情しているわけでも無いのに、こんなにも身体が熱くて疼く。もしかしたら自分でも気付かないうちに、引っ込んでいたヒートが顔を出したのかも知れない。 　自分の内に湧き上がる、欲だけでは無い初めての感覚に戸惑っていた。 　水野に触れられている部分の全てが気持ち良くて、全身が性感帯にでもなったみたいに艶めいた声が止まらない。 　鎖骨に触れる指先も、硬くなった乳首に這わされる舌先、濡れた双丘の間を焦らすように這う太い指。 　流生が声を上げる度に水野が執拗に攻めてくるから、下着の中はびしょ濡れだった。 　水野と深くキスをする度に、水野の昂ぶりを腹部に感じる。熱いそれが、早く欲しい。 　僕の中を、感じて欲しい――。 　そんな思いが脳内を占めているのに、羞恥心が邪魔をして口には出せなかった。 　だから、スカートを腰までたくし上げられて、下着が指でずらされると期待と歓喜で胸が高鳴り、性器を僅かに扱かれただけで頭の中が真っ白になっていた。 　水野の掌は白濁に塗れていたのに、満足そうな口元は弧を描いていた。 「ヒートに良い思い出、無かったんだろ。俺がその思い出、全部塗り替えてやる」 　窄まりに挿れられた水野の指に内側を掻き混ぜられ、弄られる程に息が荒くなる。 　水野の言葉が嬉しいのに、与えられ続ける快楽に抗えなくて、腰が無意識に揺れ動いてしまう。グチュグチュという水音が厭らしく室内に響き、それに酷く興奮していた。 「ヒートが待ち遠しいって思える位、……、流生を愛して、何度だって抱いてやる」 　指が引き抜かれた流生の窄まりがヒクヒクと蠢き、水野を待ち焦がれていた。 　生理的な涙なのか、感極まった涙か。視界に映る水野の顔が、僅かに滲み始める。 　片脚を水野の腕に抱えられると、性器の先端と窄まりから流生の体液が伝う。そんな些細な刺激にさえ流生が身体を震わせていると、窄まりに水野の昂ぶりが押し当てられた。 　反射的に身体が強張り、水野にしがみついて肩口に額を押し付ける。 「あっ……、ぁ、んっ、はぁ、あぁっ」 　ゆっくりと押し入ってくる熱で身体が小刻みに震え、荒くなる自分の呼吸が他人事みたいだった。 「おいっ、力抜け」 「んっ、……、はっ、ぁ、あっ、あぁ」 　水野の声が低くて、吐息も熱い。余裕が無さそうにも聞こえるのは、流生のフェロモンのせいかも知れない。 　水野の熱い昂ぶりが流生の内側を何度も擦ってきては脱力を繰り返し、水野の腹に、何度射精したのかもわからなかった。 「し、慎、一郎、君、……っ、す」 　――好き、ずっと一緒に居たい。 　自然と浮かんだ言葉が言えたかどうかはわからないけれど、意識が飛ぶ手前に、慎一郎君にも、同じ事を言われた気がした。