9 / 36
第9話
9.
「で? なんだったんだ、面白い事って」
宿屋の近所の夫婦が営んでいるこじんまりとしたレストランで、各々頼んだ食事を摂る。
厚切りされた燻製肉をバターで焼いたものを口に頬張りながらそう訊ねると、向かいのアーサーはスパイスの効いた細い麺を上品に食べ飲み込み、こちらへと視線を向けた。
「あぁ……まぁ、仮説ではあるが、どうやらお前と交わると、俺の力が増すらしい」
「……は?」
俺の思考が、1回宇宙旅行をする。
「ん? だから、お前と|夜伽《よとぎ》をすればするほど俺は強くなる、と言ったところか」
……この色男、本当に何を言っているんだ?
手にしていたナイフとフォークを一旦置き、俺は額に手をやりながら1度宙を仰ぐ。
「イヤ、マサカ、ソンナ」
性交したからレベルアップするなんてそんな話……冗談抜きで聞いた事がない。
「現に今、俺は自分の力が普段より増していると感じている。ファフニールと戦った時のアレも…それによるものだろうな」
「まぁ、そう言われると……」
確かにあの時、魔剣アーサーの力は普段とは比べ物にならない程だった。あの堅い甲殻を突き抜け、身体を真っ二つにするなど、常識では考えられない。
「それにな」
目の前に置かれた葡萄酒のグラスを手に取ると、アーサーはそれを口に運ぶ。
「それに?」
何かを言い淀むようなその姿に、俺は思わず首を傾げる。
「あの時わ割れる様な頭痛と共に俺の中に、記憶の様なものが蘇った」
「記憶……?」
半分程減った葡萄酒が、テーブルの上に静かに置かれる。
「朧げなものだし、なんの記憶かは定かではない。俺が過去に……例えばロアの祖父と共に体験したものなのか、はたまた俺は、アーサーではない|別物《だれか》なのか」
「…っ!!」
「アーサーではない」という言葉に、食事をする手が止まる。
「そうだと決まった訳では無いが、もしかしたら……な。あくまで仮説に過ぎない事だ」
――アーサーではない。
何故かその言葉が、俺の心に深く突き刺さった。
「どういう事だ? 何らかの理由で、人間の魂が俺の剣に憑依したとか、そういう事か?」
「まぁ、可能性があるとしたらそうだろうな」
アーサーの低くて静かな声に、俺は息を呑む。
あれ、なんでこんな動揺してんだ。
もしそれが本当で記憶が戻れば、アーサーはどうなってしまうのだろう。
もし、彼に帰る場所があるとしたら|彼《アーサー》は……
「ロア……?」
アーサーの呼び掛けに、俺の意識がハッと戻る。
産声を上げた、このモヤモヤは何だ。
アーサーに戻るべき場所があるならば、そこに還るべきだろ。俺の剣としてこの先いる訳にはいかない。
だってそれは、|彼《・》|が《・》|本《・》|当《・》|は《・》|人《・》|間《・》|で《・》|あ《・》|る《・》事を意味しているのだから。
「……なら俺、協力する……」
「うん?」
まだ彼が『アーサー以外』の別者だと決まった訳じゃない。もしかしたら本当にアーサー・オブ・ダークそのものかもしれないんだし。長い年月、剣が心を持って…|実体化《人になった》したなんて話、あってもおかしくはないだろ?
アーサーが俺の愛剣が具現化した姿で間違いない分かれば、胸を張って一緒に居る事が出来る。
……あれ? 俺、これじゃまるで……
「アーサーの記憶が戻るの、手伝う」
目を伏したままそう呟くと、向かいから「ふーん?」とそれはそれは興味深い声が投げられた。
まぁ、だって……つまるところそれが一番だろ。それが分かってからハッキリさせればいい。
この、心の、モヤモヤの正体を。
この喉の乾きをどうにか潤したくて、アーサーが残した葡萄酒に手を伸ばしそれを一気に飲み干した。
「それは、この先毎晩のように俺に抱かれたい……という意味で捉えても?」
そんな言葉のせいなのか、若しくは久しぶりに飲んだ葡萄酒のせいなのか、俺の顔は一気に赤くなる。
俯いたまま小さく頷いている目の前で、アーサーが極上の笑みを浮かべているなんて、気付きもしなかった。
>>>
「まだ3回目なのに随分と淫らになったなぁ、ロアは」
……こ、これはアレ……
アーサーの力と記憶を取り戻す為。
「んぅ、……ぁっ、ん……っアーサー……もっと、もっとして」
俺が秘部舐めて欲しいと差し出したのは、彼のためであって、決して自分の欲望などでは。
「尻を弄られるのが好きなんだな、可愛い……」
「ゃっ、……ん、……だって、きもち……い」
ベッドに横になるアーサーの上で四つん這にになり秘部を彼の眼前に露わにすると、腰を思い切り彼の方に引かれ、もう長い時間その場所を舐められ続けている。
ナカに舌が侵入し、ねっとりと内部を舐められ、じゅぷじゅぷと出し入れすれば内部が悦び伸縮するのを止める事が出来ない。
も、やばい……淫乱だって罵られてもいい。ずっとこうされてたい……あったかいアーサーの舌きもちい。吸われるのすき、キュってする。
入口に唇を充てがい、じゅるるっとナカを吸われると、奥の方が甘く疼き、得体の知れない快楽が身体を襲った。
「っ、まって……ぁっ、あっんぅ、……アーサー……はっ、なんか、くるっ……なにこれ、はっぁ、あっ」
「ん、……そのまま……その気持ちいいのに身体を任せて」
ぐちゅぐちゅ音を立てながらナカをしつこく舐められ、じゅるっと入口を吸われる、それを繰り返して居るうちに、俺のナカがぎゅぅぅっと締まり頭が真っ白になる。
なにこれ、イク……きもちい……でるっっ……
「んぁぁぁっっ! イクっ……いっちゃ、……あぁああぁっっ!!」
ビクンっと身体が大きく跳ねたかと思えば、内部から始まった痙攣が全身を襲う。
……なにこれ、イった?でも、前から何も出てない……こんなイき方おれ、しらない……やばい、これ癖になりそう。
「ん、後ろでイけたんだな。えらいぞロア」
唇を秘部から離し満足そうに微笑むアーサーは、身体を起こして俺を組み敷くと、「後ろ……?」とまだぼんやりした意識のままの俺の身体を一気にその猛ったモノで貫いた。
「っっ! だめ、まだ、……イってる……ぁあっ、あっぁ、おかしく、なる……からぁ」
痙攣が止まらない内部を押し広げるように、アーサーの容赦ない突きが繰り返される。
「後ろは何回でもイけるらしいぞ。狂うくらい気持ちよくなろうな」
ずぷっ、ぐぷっ、ぱちゅっと派手に肌がぶつかり合う音が聞こえる。アーサーが俺のイイ部分を何度も擦るせいで、内部が再び痙攣を起こす。
「んぁぁ、 ら……め、……また……イっちゃ……ぁああっっっ!!」
腰が震え、アーサーの背中に回された指がこれまでとは比べ物にならない程その皮膚を深く抉る。
「は、最高……可愛い可愛いロア。愛してる、一生手放さないから、覚悟しとけよ」
連続した絶頂の訪れで崩壊寸前の脳と身体に、そんなアーサーの言葉は届いていない。
どうしよ、バカんなってる……目がチカチカする、もっと欲しい……もっと後ろイキたい。
「アーサー、……どうしよ、もっとほし……アーサーの堅いで……ナカ、ぐちゃぐちゃに、して……ほし」
「元より朝まで可愛がるつもりだ。尻の穴、割れて元に戻らなくなるかもしれないけどな」
そこからの記憶はない。
ただひたすらに本能のままにアーサーを欲しがり、何度も襲い来る絶頂がもたらす快楽をただひたすらに貪った。
ともだちにシェアしよう!

