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第16話

16. 「グァァァァァ!!」  ――遺跡のようなダンジョン内で大暴れすること数時間。 「わー! 凄いーっアーサーかっこいい!」 「そうか? リアンのサポートのタイミングも絶妙でいいな」 「ロアは、なんか荒いー! もう、僕とペア組んじゃおうよぉ、アーサー!」  ――俺はイラつきを 「クソがよぉぉぉ!!」 「ギャァァァァァ!」  ――目の前にこれでもかと現れ続けるモンスターを切り刻む事で発散していた。 「はぁ、はぁ……どんだけいるんだよこのダンジョン内……モンスターの巣もいいとこだろ」  今にも崩れ落ちそうな石造りの遺跡。  その真ん中にある長い長い階段を登った先にある扉を開けるやいなや始まるモンスター達の猛攻。ゴブリンやワイバーン等、下級のモンスターばかりだが、それにしたってもう100近い数を討伐している。  突入前、取り敢えずで買った大剣は、やはりアーサー・オブ・ダークと比べるとその能力は格段に落ちてしまうが、それでもまぁ雑魚敵を狩るには申し分ない。  そんな事よりも、問題はアーサーだ。  先程から炎魔法で敵の大群を一瞬にして塵に変えたり…そうかと思えば、アンデッド系のモンスターを浄化魔法で弱体化させたり……どこにそんな能力を隠し持っていたのか開いた口が塞がらない。  やはりあれか。  性交する程レベルアップする効果なのか。  『俺が育てました』ってラベルでも貼ってやろうか今度。  アーサーが強くなるのは喜ばしい事だ。単純に戦力が上がるし。  しかし、彼が何がする度にリアンから黄色い歓声が飛びまくるのは……正直、不愉快極まりない。 「いい加減にしろッッッ!!」 「ォギャァァァァ!」  そう叫びながら、推定52体目のモンスターを切り刻むさすがに汗が額を伝い、息が上がる。  腕で汗を拭っていると、横から冷たい瓶が差し出された。 「少し休憩にしましょう。ごめんなさい……タンクさんがあまりに優秀だから、つい甘えて負担をかけてしまいました」  瓶を受け取ると、その向こうにはウェイドの優しい笑顔があった。 「あ、ありがとうございます。ウェイドさんこそ、双剣での身のこなし……素晴らしいの一言です」  水を受け取り、つられて笑顔を彼に返す。  この人、ヘラヘラとした昼行燈だと思ってたけど普通に強い。身体能力が高いのか、身のこなしの軽すぎて、正直少し人間離れした動きにも見えるもんな。 「いえ……自分はちょろちょろと動き回っているだけですから。手数は稼げますが、殺傷力は低いので。ロアさんが攻撃力の高い大剣使いで良かった」  終始和やかな雰囲気で話す2人の間に、唐突に雷魔法が飛んでくる。 「は!? 危な! ちょ、アーサー何するんだよ」 「悪い悪い、手が滑った。……なぁリアン、汗拭いてくれないか?」 「もっちろーん!」  アーサーは、こちらに無表情で魔法を飛ばして来たかと思うと直ぐに極上の笑顔をリアンに向け、その綺麗な顔を差し出す。  そのご尊顔を甲斐甲斐しくリアンはタオルで吹き「水も飲む?」と瓶を開けてアーサーの口まで運んでいる。  そんな様子を眉間に見たことも無い程の深い、ふかーい皺を刻む視線に気付いたアーサーは、そんな俺を鼻で笑った。  は……めっちゃくちゃ煽るじゃん、なんだよアレ。 「も、行きましょ、ウェイドさん。次の部屋の偵察でもしましょ」  そう言ってウェイドの腕に自分の腕を絡ませれば、アーサーの眉がピクッと動く。  ふん、ざまぁみろ。  そんな事を思いながら、ウェイドの腕を引っ張り次の部屋に向かおうとした時だった。  『ピコン』  ウェイドの足元で、何やら良からぬ音が響く。 「「あっ……」」  偵察に向かおうとした2人が、同時に声を上げたときにはもう遅い。 「……ロア!!」 「アーサー!!」  俺とウェイドの足元に突如として大穴が開き、2人を吸い込んだかと思えば、すぐさまそれは閉じてしまう。反射で駆け出し伸ばされたアーサーの手を、俺は掴むことが出来なかった。 >>> 「……っ……いって」  パラパラと石の破片が顔に当たる感触で、意識が覚醒する。  どうやら下の階層まで落ちたのだろう。打ち付けた背中と腰が痛む。  ふと、自分の身体が|随《・》|分《・》|身《・》|軽《・》|な《・》|事《・》に気が付いた。  ズッシリと感じる筈の甲冑の重みを、全くと言っていい程感じ無い。  それどころか、やけに胸元がスースーする。  訳が分からず起き上がろうとした身体は、何かに押さえつけられて動けない。 「おや……起きてしまいましたか」  その声がした方に、おそるおそる顔を向ける。  そこには、今まさに、俺の下半身に纏ったズボンの前を開き下着を脱がせようとしていた、ウェイドの姿があった。 「ダメですよ、ロアさん……ダンジョン内のギミックは、予めチェックしておかないと」 「は? おま、え……なに、して……」  震える声を絞り出す俺に、ウェイドは一旦その手を止めたかと思えば、俺の上に馬乗りになった。  上に着ていた筈の黒いシャツは前が裂かれ、顕になった乳首に、ウェイドはズボンの中で張り裂けんばかりに盛り上がったソレを擦り付ける。  ……キモチワルイ。 「最初に見た時から、好みだなと思っていたんですよ。あ、どうぞ好きに泣き叫んでください? 無理矢理……というのは僕の性癖なので」  あの優しい笑顔はどこへ行ったのやら。  目の前で笑う奴の顔は、欲で塗れた変質者の顔そのものだった。  キモチワルイ……  キモチワルイ……  アーサー以外が素肌に触れるなんて。  胸の辺りから、何かが込み上げてくるのを感じた。  

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