4 / 5
第4話 光のミカエル最後のお仕事、そして恋の芽生えは突然であったのだが『ミカエルSIDE』
――『ミカエルSIDE』
天使の給料を決定する会議、上級天使セラフィム様と俺が天使代表として発言できる。
他の出席者はすべて神だ。
天界には様々な宗教の神がいる。
会議では――。
神道の最高神アマテラス様が議長。
様々な宗教で創造神とされる神とかは暇そうにしていたり。
宗教や国の隔たりは一切ない。
自由。けれど、そう人間には説明できないから神々は適当に体裁を保つ。
人間界でも昔ほどは宗教で戦争にならないし、ネットでは発言が自由で、神を冒涜するようなコンテンツが存在している。
さすがに、神々で成人向けカップリングはしちゃだめだと思うんだけどな。
天界で「あのエロ本をどう回収して、デジタルタトゥーを消すのだ!」って騒ぎになった時は本当に大変だったな……。
あの事件の犯人は島国の、そう。
――日本人は変態らしい。
無宗教な上に世界最大のエロコンテンツ国として、無敵国民だからな。
注視しておかなくては。
「ミカエル」
「セラフィム様」
俺の名を呼んだ彼はふんっと、視線だけよこしながら隣を通り過ぎて席に着いた。
しばらくして神々が集まると全員がアマテラス様に視線を向ける。
「これから、天使の給与を決める」
神々が意見を出し終えて、ついに天使に話題が回ってきた。
「わたくしセラフィムは――」
「わたくしミカエルは――」
会議が終わり、俺は肩を落としていた。
「今回も大天使の給与は20万円か……すまない」
「ふーん、雀の涙とはこういうことか。我、セラフィムはそうそう。800万円だった。ミカエル、そなたは本当に交渉が下手ですね」
セラフィム様はふふんっと私の横を通り過ぎていった。
「はあ、ガブリエルがまた怒るな。ラファエルとウリエルは貯金があるからいいけど。ルシフェルも20万円組だ……なんだか、最近よく買い物をしに人間界へ行っているし、申し訳ないなぁ」
羽が舞う。なんだろうと庭園に目を向けると、ルシフェルを見つけた。
「!?」
「ルシフェル?」
逃げた。追いかけられなかった。
天使は口づけこそしてはならないが、性行為が禁止されているわけではない。
天使が欲を持たないとは人間に向けた建前で、実際は食欲も性欲だってある。
「あんな木陰で……」
きっと、誰かとしていたんだろうけど。
珍しいことじゃないし、特別なことでは全くないし。
誰と誰がしちゃいけないとかはないし。
俺が邪魔してはいけないことだろうし。
「……これ」
この薄い本。落としものなら届けてあげないと。
ルシフェルは木陰でこれを読んでいただけかもしれない。
よかった。
「ミカエル? ルシフェル?」
表紙にミカエル×ルシフェルという表記が。
これは、神がカップリングされた時の記号では?
「いや、他の意味もあったはずだ」
人の本を勝手に開くわけにはいかない。
このまま届けよう。
でも、先ほどもそうだったが。
ルシフェルは俺を避けている気がする。
最後の3日間に入ってからは声を掛けようとしても逃げられるし、もう1000年会えないのにどうしたものか。
どこまでも続く美しい庭園の中。ルシフェルを見つけた。俺に気付いていないようだ。
「ルシ……いや……まてよ」
捕まえよう。逃げられたら話も出来ない。
ルシフェルを後ろから抱きしめた時、俺は目を見開いていたと思う。
密着すると何か、不思議な感覚がした。
安心するような、鼓動が速くなるような――。
「――ルシフェル!」
◇
「み、ミカエルッ!?」
後ろから抱きしめられたと思ったら、ミカエルに体を……お、押された!?
おれは頭が真っ白なままで地面に倒れる。
びっくりして彼の顔を確認しようとしたが、状況を理解するより前に、顔の横に薄い本が落ちてきた。
両手首を掴まれ、おれは芝生に背をつけているのだ。
ミカエルに組み伏せられた状態で、彼の綺麗なロイヤルブルーの瞳ががおれに迫る――。
その瞬間、さあっと体中が汗ばんだ。
恐れではないけど、緊張のような、ぞくっとするような。
これは夢だろうか――?
ともだちにシェアしよう!

