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第4話 光のミカエル最後のお仕事、そして恋の芽生えは突然であったのだが『ミカエルSIDE』

   ――『ミカエルSIDE』    天使の給料を決定する会議、上級天使セラフィム様と俺が天使代表として発言できる。  他の出席者はすべて神だ。  天界には様々な宗教の神がいる。  会議では――。  神道の最高神アマテラス様が議長。  様々な宗教で創造神とされる神とかは暇そうにしていたり。  宗教や国の隔たりは一切ない。  自由。けれど、そう人間には説明できないから神々は適当に体裁を保つ。  人間界でも昔ほどは宗教で戦争にならないし、ネットでは発言が自由で、神を冒涜するようなコンテンツが存在している。  さすがに、神々で成人向けカップリングはしちゃだめだと思うんだけどな。  天界で「あのエロ本をどう回収して、デジタルタトゥーを消すのだ!」って騒ぎになった時は本当に大変だったな……。  あの事件の犯人は島国の、そう。    ――日本人は変態らしい。      無宗教な上に世界最大のエロコンテンツ国として、無敵国民だからな。  注視しておかなくては。 「ミカエル」 「セラフィム様」  俺の名を呼んだ彼はふんっと、視線だけよこしながら隣を通り過ぎて席に着いた。  しばらくして神々が集まると全員がアマテラス様に視線を向ける。 「これから、天使の給与を決める」  神々が意見を出し終えて、ついに天使に話題が回ってきた。   「わたくしセラフィムは――」   「わたくしミカエルは――」        会議が終わり、俺は肩を落としていた。 「今回も大天使の給与は20万円か……すまない」 「ふーん、雀の涙とはこういうことか。我、セラフィムはそうそう。800万円だった。ミカエル、そなたは本当に交渉が下手ですね」  セラフィム様はふふんっと私の横を通り過ぎていった。   「はあ、ガブリエルがまた怒るな。ラファエルとウリエルは貯金があるからいいけど。ルシフェルも20万円組だ……なんだか、最近よく買い物をしに人間界へ行っているし、申し訳ないなぁ」    羽が舞う。なんだろうと庭園に目を向けると、ルシフェルを見つけた。 「!?」 「ルシフェル?」  逃げた。追いかけられなかった。  天使は口づけこそしてはならないが、性行為が禁止されているわけではない。  天使が欲を持たないとは人間に向けた建前で、実際は食欲も性欲だってある。 「あんな木陰で……」  きっと、誰かとしていたんだろうけど。  珍しいことじゃないし、特別なことでは全くないし。  誰と誰がしちゃいけないとかはないし。  俺が邪魔してはいけないことだろうし。 「……これ」  この薄い本。落としものなら届けてあげないと。  ルシフェルは木陰でこれを読んでいただけかもしれない。  よかった。 「ミカエル? ルシフェル?」  表紙にミカエル×ルシフェルという表記が。  これは、神がカップリングされた時の記号では? 「いや、他の意味もあったはずだ」  人の本を勝手に開くわけにはいかない。  このまま届けよう。    でも、先ほどもそうだったが。  ルシフェルは俺を避けている気がする。    最後の3日間に入ってからは声を掛けようとしても逃げられるし、もう1000年会えないのにどうしたものか。    どこまでも続く美しい庭園の中。ルシフェルを見つけた。俺に気付いていないようだ。  「ルシ……いや……まてよ」  捕まえよう。逃げられたら話も出来ない。  ルシフェルを後ろから抱きしめた時、俺は目を見開いていたと思う。  密着すると何か、不思議な感覚がした。  安心するような、鼓動が速くなるような――。   「――ルシフェル!」  ◇ 「み、ミカエルッ!?」  後ろから抱きしめられたと思ったら、ミカエルに体を……お、押された!?  おれは頭が真っ白なままで地面に倒れる。  びっくりして彼の顔を確認しようとしたが、状況を理解するより前に、顔の横に薄い本が落ちてきた。  両手首を掴まれ、おれは芝生に背をつけているのだ。  ミカエルに組み伏せられた状態で、彼の綺麗なロイヤルブルーの瞳ががおれに迫る――。  その瞬間、さあっと体中が汗ばんだ。  恐れではないけど、緊張のような、ぞくっとするような。      これは夢だろうか――?

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