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いじめっ子も美少年

 浅井先生が、悠馬先輩と怜央先輩の顔を交互に見ながら、力強く宣言した。 「俺がお前らを本物の“いじめっ子”にしてやる……だから、俺の“指導”を真面目に受けるんだぞ?」   悠馬先輩は「はい!」と元気良く返事をした。  怜央先輩は返事こそ返さなかったけれど、代わりに力強く頷いた。  そんな二人の間で、僕は改めて震え上がった。  いよいよ浅井先生の“指導”が始まる。  その最初の“メニュー”こそが「浣腸」だろう。    ところが僕の不安は、いわゆる“杞憂”だった。  浣腸する前に、浅井先生にはまだ他にやりたいことがあるようだった。  「じゃあ、まずはお前たちに“お仕置き”をしなきゃいけないな……?」 「え……?」  悠馬先輩が頓狂な声を漏らした。  怜央先輩も不思議そうな顔をした。  聞き間違いだと思ったのか、悠馬先輩は浅井先生に問いただした。 「俺たちに“お仕置き”するんですか……?」 「ああ、そうだ……」  先生が頷いてみせると、今度は怜央先輩は質問を重ねた。 「どうして俺たちが“お仕置き”されなきゃいけないんですか?」 「お前たちが、伊織に甘い“いじめ”しかしてこなかったからだよ……?」  先生はまるで裁判官が判決文を述べるみたいに、“お仕置き”に正当な理由があることを主張した。 「お前たちの“いじめ”が甘かったから、伊織はお前たちにいじめられていることを俺に“告げ口”したんだ。でも“いじめ”なんて、教師にとってはいちばん面倒な問題だし、俺は生徒指導の立場だから、校内の“いじめ”が発覚したら俺の責任を問われちゃうかもしれないだろ? はっきり言って“告げ口”なんて迷惑なんだ。つまり、俺はお前たちに迷惑をかけられたってことだ。“お仕置き”は当然だろう……?」  悠馬先輩も怜央先輩も、また苦笑いを浮かべていた。  浅井先生が当然のように述べた“お仕置き”の理由に、少なからず不服があるみたいだった。  けれども、浅井先生は不服申立てを聞く機会を二人に与えることもなく、続けて“お仕置き”の内容を一方的に告げた。 「二人とも制服を脱いで、チ×ポを見せろ。そのチ×ポを、俺の前でビンビンに勃てるんだ……」    一拍の間を挟んで、先生は付け加えた。 「チ×ポを勃えるのには、俺が力を貸してやる……?」  束の間の沈黙のあとだった。 「アハハハ、ハハハッ!!」 「ハハハハハッ゙!!」  悠馬先輩と怜央先輩の爆笑が「生徒指導室」に響き渡った。           ♫ ♫ ♫  二人が笑う理由は、容易に察しがついた。  “お仕置き”なんて禍々しい言葉を使ったけど、実のところそれは冗談で、先生は二人のペニスが見たいだけだって分かったからだ。  浅井先生は「暴力教師」として校内で名を馳せていると同時に、美少年が大好きな“男色家”としても有名だった。           ♫ ♫ ♫  だけど、あくまでも冗談だと分かったからこそ、二人は先生の“お仕置き”に興味を唆られ、乗り気になったみたいだった。  一頻り笑ったところで、悠馬先輩が呟いた。 「つまり……先生は伊織のチ×ポを見るだけじゃ満足できないってことですね……?」  悠馬先輩の一言は、唯一「美少年」であることが自慢である僕の“自尊心(プライド)”を深く傷つけた。  当たり前の話だけれど、僕は全裸でハードルに縛りつけられている訳だから、浅井先生の目にペニスを晒している。  でも、悠馬先輩が言った通り、浅井先生は僕のオチ×ポを眺めるだけじゃ満足できないみたいだ。  きっと今の浅井先生の目には、僕の「美少年」としての価値も、低く見積もられているのだろう。  僕の価値を貶めているのは、他でもない悠馬先輩と怜央先輩だ。  要するに、悠馬先輩も怜央先輩も、僕に負けるとも劣らない……いや、僕を凌ぐかもしれない「美少年」だった。          ☆☆☆☆☆  先生の“お仕置き”に先に名乗りを上げたのは、悠馬先輩だった。 「俺、先生にチ×ポ見せまーすっ!」  元気良く言って、黒いローファーを脱ぎ捨て、同じく黒の靴下を両足から外した。  続けて、白い半袖のカッターシャツとグレーのTシャツを上半身から取り去り、その場に落とした。  スラックスを脱いだところで、深呼吸をひとつ挟むと、ワインレッドのビキニパンツを太股まで下ろして、浅井先生にペニスを披露した。    よくよく考えてみれば、パンツを下ろしてペニスを周囲に見せつけるなんて、かなり恥ずかしい行動だ。  同じことを他の男子がすれば、単なる間抜けに見えるだろう。  だけど、悠馬先輩は違った。  ペニスを丸出しにした悠馬先輩は、名画に描かれた裸婦のように、妖艶だった。  情けない話ではあるけれど、僕は悠馬先輩に目を奪われてしまった。         ☆☆☆☆☆  幾千もの騎馬兵の先頭に立って、大地に轟音を響かせながら大平原を駆け抜ける。  サラブレッドの上で剣を振り回し、向かってくる敵を次から次へとなぎ倒す。  もしも悠馬先輩が、歴史に名を残す巨大帝国の騎兵隊の隊長だったら、さぞかし戦場は美しい絵になっていたことだろう。  このベリーショートの美少年は、男子が本能的にもっている“闘争心”を“美しさ”に変換して、その全身に纏っていた。          ♫ ♫ ♫  まだ幼い子供だった頃の名残を残した、どこか無邪気な雰囲気を漂わせた唇も、その上で佇む小さな鼻も、実のところ見映えのするものだ。    けれども、やっぱりいちばんの存在感を醸し出すのは、鋭い眉を“装飾品”にした目だ。  一刻も早く獲物を狙う獣のような、なんて月並みな表現じゃ物足りない。  捕えた獲物を八つ裂きにして、悶え苦しむ哀れな様を一刻も早く見てみたい。  そんな欲望に満ちた眼光を放つ目が、なぜか魅力的だった。    小麦色で統一された“肉体美”も、一流の芸術品のようだった。  重厚な盾を二枚並べたような胸板は、深い溝でしっかりと割れた下腹の上に据えられている。  逞しい上半身を支える太股も、ただ「頑丈」の一言に尽きる。  その全身を丁寧に見渡してみても、余分な贅肉は微塵も見受けられなかった。

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