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怜央先輩にお仕置き②

「なあ、怜央……?」  さも意味ありげな口調で、先生が怜央先輩に――というよりも、怜央先輩の“お尻の穴”に語りかける。 「チ×ポが勃ったら、さっき悠馬が歌った歌を、お前にも歌ってもらうぞ……? もちろん、上手に歌えたら“ご褒美”をやろう……?」 「どんな“ご褒美”ですか?」 「この尻の穴にキスしてやろう……?」 「えっ!?」  大胆な申し出に緊張したのか、それとも疑心暗鬼なのか、怜央先輩が強張った声で聞き返した。 「尻の穴にキスって……冗談ですよね……?」  だけど、浅井先生はきっぱりと言い放った。 「俺はそんなつまらない冗談は言わない……」    怜央先輩は何も言葉を返さなかった。  先生はその沈黙を“了承”と捉えたみたいで、話を進めた。 「じゃあ、まずは“お仕置き”を終わらせないとな……? 尻の穴をくすぐってやるから、チ×ポを勃てるんだ? でも、俺にはお前のチ×ポは見えないから、勃ったらちゃんと歌を歌うんだぞ?」  そう言いつけてから、二拍の間を置いた後だった。 「ふ、うふん……」  小さいけれど破廉恥な声が、体育倉庫に響いた。   「う、うふ……う、う、ふぅん……」  それが“クール・ビューティー”の怜央先輩の声だとは俄には信じられないくらい、だらしない声だった。 「ふ、ふ、ふぅん……う、うふ……」  間もなくすると、悠馬先輩のオチ×ポを勃てる時にそうしたように、浅井先生が怜央先輩のオチ×ポの勃起を煽る言葉を並べ立てる。  でも、悠馬先輩の時の「“呪文”を唱えるような」口調とは違った。  小さい男の子に話しかけるような口調だった――けど、普段の言動が乱暴で、おまけに“強面”だからこそ、そんな浅井先生は不気味に、そしていっそう恐ろしく見えた。 「怜央、チ×ポを勃ててごらん……?」 「うふ、ふ、ふぅ……ん!」 「お前のチ×ポ、ビンビンに勃てるんだよ……?」 「ふ、ふぅん……ふん……」 「ほら、勃ててごらん……勃ててごらん……?」 「ふ、ふ、うん……」  ここから、やっぱり小さい男の子に話しかけるような感じで、先生は怜央先輩にいくつかの質問を重ねた。 「上手な歌が歌えたら、どんなキスをしてほしい……?」 「ふ、ふ、ふぅぅ、ん……」 「お尻の穴にそっと唇を重ねるような、軽いキスがいいかな……?」 「ふ、ふふん……」 「それとも……怜央の尻の穴と俺の舌が絡み合うような、ディープキスがいいかな……?」  なおもだらしなく悶えつつも、怜央先輩は先生に答えた。 「う、ふ……ディープキスが、いいです……?」  先生が楽しそうに笑った。 「フフフ……いいぞ。じゃあ、ディープキスをして、怜央のお尻の穴を、もっとイヤらしい声で啼かせてあげるからね……?」 「はい、ふ、うん……」 「じゃあ、ディープキスが終わったら、次は乳首をくすぐってあげようね……?」 「あ、ありがとう、ございます……ふ、ふ、ん……」 「乳首をくすぐった後は……乳首をくすぐりながら、お尻の穴にディープキスをしよう……?」  先生がそう言った刹那のことだった。 「れ、怜央のチ×ポはビ〜ンビン、うふ……怜央のチ×ポはビ〜ンビン……ん、んん」  “クール・ビューティー”には似つかわしくない間抜けな歌を、怜央先輩が口ずさんだ。  どうやら、怜央先輩のオチ×ポが勃起したみたいだった。  ところが、怜央先輩がワンフレーズ歌ったところで、先生がちょっと意地悪な口調で、怜央先輩を問い詰めた。 「怜央……俺はさっき『チ×ポが勃ったら歌を歌え』って言ったんだ……?」 「はい……」 「でも、お前のチ×ポは、もうずいぶん前に勃ってただろう?」 「え……?」 「最初のうちは股の間からチ×ポが見えてたが、大分前から見えなくなってたぞ?」 「あ、あの……」  怜央先輩が分かりやすく狼狽えた。  浅井先生の指摘は、図星のようだった。 「どうして、今頃になって歌ったんだ?」  ニヤニヤ笑う先生に聞かれて、束の間押し黙ってしまった怜央先輩だけど、やがては観念したように、先生に打ち明けた。 「歌を歌わなかったのは、やっぱり恥ずかしかったからだけど……先生の話を聞いてたら、我慢できなくなっちゃって……?」 「つまり、乳首をくすぐられながら、尻の穴にディープキスされたいんだな……?」 「はい……」 「フフフ、“ご褒美”に(なび)いて、恥ずかしい歌を歌うなんて……怜央もかなりのスケベだな……?」  先生がまた楽しそうに笑って、束の間の後だった。 「ぬはッ!?」  怜央先輩が――またしても“クール・ビューティー”とは思えないような――頓狂な叫び声を上げた。  怜央先輩のお尻は先生の頭に遮られて見えないので、先生が怜央先輩に何をしたかのか、僕には分からなかった。  でも、すぐに始まった二人の遣り取りを聞いているうちに、それを推し量ることができた。 「先生ッ、何するんですかッ!?」  お尻は突き出したまま、慌てふためいた様子で抗議する怜央先輩に、浅井先生は平然と言ってのける。 「これは……俺の言いつけに背いた“お仕置き”だ……?」  それから続けて五回、怜央先輩は、僕の耳には奇妙にすら聞こえる声を上げた。

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