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恋に落ちた“いじめっ子”②

「感じてる悠馬の顔、マジで可愛い……」  乳首を愛撫する指先を止めて、怜央先輩が楽しそうに、だけど真剣な顔で呟いた。   「か、からかうなよ……?」  今まででいちばんの照れ笑いを浮かべてそう返したけど、悠馬先輩もやっぱり嬉しそうだった。    怜央先輩が聞いた。 「悠馬、どっちにする……?」 「どっちって……?」 「キスしながらくすぐられるのは、乳首がいい? それとも尻の穴がいい……?」 「そ、そんな変なこと聞かれても、答えられる訳ないだろ……?」  質問が質問だけに、悠馬先輩はぶっきらぼうに答えたけど、怜央先輩は能天気だった。 「じゃあ、両方やってみようか……?」  一方的に告げると、怜央先輩はまた悠馬先輩の唇を自分の唇で塞いだ。    有無を言わさず、悠馬先輩の唇の隙間に舌を差し込む。 「う、むぅ……」  高い呻き声を微かに震わせながら、悠馬先輩は怜央先輩の舌を受け入れる。 ――ヌチッ、チュッ……ヌプチュッ……――  あのナメクジが抱き合っているみたいな音が、また体育倉庫に響き渡る。 ――チュプ、チュッヌプッ……チュプッ……――  程なくして、その粘着質に溢れた音に、悠馬先輩のだらしない声が重なった。  怜央先輩が、悠馬先輩の乳首をくすぐり始めたのだ。 ――チュ、ヌプッ、ヌプチュッ……―― 「あッ、あふっ……あふ、ふぅん……」 ――ヌップチュッ、ヌップッ、ヌプチュ……―― 「あは、ふぅ……あふぅ、あぅん……あはぁ……」  怜央先輩の舌を受け入れているがために、唇を塞ぐことが出来ず、挙げ句どうしてもだらしなく延びてしまう喘ぎ声だ。 ――チュ、チュププッ、ヌチュ……ヌップッ、チュ……―― 「はあぁ、あは、あはあはぁ……」  さらに丹念に観察してみると、最初のうちの悠馬先輩は、乳首を転がされる度に声を漏らしていた。  けれど、キスが始まってしばらくした頃から、乳首を転がされていない時にも、喘ぎ声を漏らすようになった。  キスそれ自体に悶えているみたいだった。  怜央先輩が唇を浮かせた。 「あんっ、あんっ、あんっ、あんっ、あんっ……」  それでも悠馬先輩が――まるで楽しい夢でも見ているかのような、うっとりとした微笑を浮かべて――一定のリズムで声を上げているのは、怜央先輩が一定のリズムで乳首を転がしているからだ。 「あんっ、あんっ、あんっ、あんっ……」 「悠馬……?」  程なくして怜央先輩が、乳首を撫でる指先を止めて、悠馬先輩に語りかけた。 「次はお尻の穴を、くすぐってみるね……?」 「うん……」 「悠馬が可愛い声を聞かせてくれたら、キスを始めるから……?」 「うん……」          ♫ ♫ ♫  それは取るに足らない、些細なことなのかもしれない。  今まではずっと「尻の穴」という言い方をしていたけど、その時の怜央先輩は「お尻の穴」と、“お”を付けた。  悠馬先輩と怜央先輩の関係が、ただの仲の良い友達から別のものへと変わりつつあることを表しているような気がした。          ♫ ♫ ♫  悠馬先輩の腰に回していた怜央先輩の右手がゆっくりと滑った。  親指だけをお尻の肉の上に残して、一列に並んだ四本の指は、お尻の割れ目に潜り込んだ。  一拍の間を置いて、すっかり緩み切った悠馬先輩の唇から、破廉恥な歓びに満ちた声が次々と溢れ出した。 「あっ、あぁん……あっ、あっ、あぁ……」  怜央先輩の右手を見てみると、まるでハープを奏でるかのような手つきで、悠馬先輩のお尻の肉を撫でている。  きっと怜央先輩の四本の指が、悠馬先輩のお尻の穴の上をひとつ、またひとつと転がっているんだろう。 「あっ、あっ、あぁ、あん……」  やがて、ハープを奏でるような怜央先輩の手つきが、さらにゆっくりになった。  それに合わせて、悠馬先輩の歓声もひときわ賑やかになる。 「はあっ、はあ、あんっ……あっあっ! あんっ……」  そんな悠馬先輩の変化に興味を持ったらしく、浅井先生が聞いた。 「悠馬、ずいぶんと感じてるじゃないか? どうしたんだ……?」  だらしない声を端々に混じえて、悠馬先輩は答えた。 「怜央……あんっ、ふぁん……指先ごとに、くすぐり方を変えてるんです、ふぁん――」 「ハハハッ……怜央もイヤらしいことを思いつくもんだな……?」  さも愉快といった風に浅井先生が笑うと、怜央先輩が先生に返した。 「どんなくすぐり方をしたら、悠馬がいちばん可愛い声を聞かせてくれるか、試してるんですよ……?」  その時、悠馬先輩が怜央先輩にしがみついた。 「あ――ンッふぁッ、あぁ――んッあふふ、ふっ――――ッはあん、あ――ンッ……」  ひとつひとつの声は軽やかに弾みながらも、その隙間もまた別のだらしない声で埋める。  悠馬先輩の唇からまた溢れる、新しい歓喜の声に、怜央先輩が満足そうに微笑んだ。 「悠馬のいちばんのお気に入りは、このくすぐり方みたいだな……?」 「あぁ――ッはあぁ、はぁ――ッあははぁん、あは――ぁんッはふぅん、はふ――ッあん……」  僕の耳で聞いても、確かに今まででいちばん破廉恥な声だ。  浅井先生も僕と同じみたいで、興味深そうに怜央先輩に聞いた。 「怜央……今は何をやってるんだ?」  けれども、怜央先輩はその回答を悠馬先輩に譲った。 「悠馬が、先生に教えてあげな……?」  悠馬先輩が大人しくなった。  先生に答える余裕を与えるために、怜央先輩が愛撫を一時中断したんだろう。

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