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「漸く来たか」  強烈な光は、医務室のドアが開いたせいで廊下の明かりが差し込んだせいだった。マテウスはユーリから熱を抜くこともなく、むしろ見せつけるように腰を動かし始めた。 「ぁ、あっ! や、っ、あぁっ」  頭がボーっとして声を押さえられない。揺さぶられるままに切なげな声が上がる。マテウスの動きの激しさに背骨が床に当たって軋むような痛みが走るが、また首を絞められては敵わない。「痛い」と呻いてもやめてくれる気配がない。身体を捩って逃れることしかできなかった。 「ああ、いいぞ。おら、出すぞっ」  言うが早いか、マテウスのものが質量を増し、熱が迸った。乱暴な指の動きで痛めたのか、じりりと焼け付くような痛みが走る。思わず眉を顰めた。マテウスはユーリをイカせるつもりなど毛頭ないと言わんばかりに、恍惚とした声とともに自分の精を何度もユーリの中に放つ。その熱が弾けるたびに短い喘ぎと忙しない呼吸の音だけが耳に付く。感覚がおかしい。 「“それ”はするなと忠告したはずですよ」  聞き覚えのある声だ。ユーリはぼんやりとした視界の中で、その声の主を探す。ゆっくりと足音が近付いてくる。その声の主はユーリの頭もとに膝を付き、しゃがみ込んだ。 「俺がやったと言わなきゃいい」 「こんなにもはっきりと手形が付いているのにですか?」  忙しない呼吸を繰り返すだけのユーリの目元を男の手が覆った。不意に触れられてびくりと体が震えた。足元からマテウスの笑い声がする。 「ゲストに抱かれた時に付けられたとでも、適当にやっておけよ。それで、あいつは?」 「すぐに来ます。しかし、少々やり過ぎではありませんか? これ以上子どもが死ぬと、別の区画のイル・セーラたちも黙っていないでしょう」 「それを黙らせるのが貴様の仕事だろう」  普段薬物を嗅がされ慣れているせいか、はっきりと会話が聞こえる。不快な感覚しかない。頭はクリアなのに、身体は動かないし、呼吸が苦しい。呻くような、喉に異物が詰まったような不自然な音がする。  ちゃんと息ができないのに、マテウスがまた揺さぶり始めた。痛みしかない。人前で犯されることなど日常茶飯事だけれど、それは薬で酩酊状態にされている時だ。得体のしれない感情のせいで涙が零れる。  微かに喘ぐ声のせいか、それとも人前でユーリを嬲ることに対する興奮か、マテウスの質量がどんどん増してくる。体がずれそうなほど、そして嫌な音があがるほど激しい腰の動きに、自然とユーリの身体が反応する。 「っは、ぁっ、ァ、んっ」  奥が熱い。そこにマテウスのものを誘うようにいやらしく腰が揺れる様を興奮したように笑う声がした。 「ほら、見ろよ。ガキのくせに誘ってやがる」  そのガキに欲情してんのはどこの誰だと吐き捨てたいが、言ったら絶対にとんでもないことをされる。ユーリは震える手で、頭もとにいる人のローブの裾を掴んだ。このにおいには覚えがある気がした。 「この子を殺すと、上が黙っていません」  ローブの裾を握る手に、男の手が触れる。氷のように冷たい手だ。でもマテウスたちのような支配的な情がない。

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