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 今日の朝、なにか予定がなかっただろうか?  朝ごはんを食べる前に支度をしておかないとと考えていたような、そんな気がしたんだけれど。  ユリウスはユーリが痛みに呻くのを「我慢しろ」と強く言いながらも、口調とは裏腹にゆっくりとベッドに寝かせてくれる。布団を掛けなおし、ユーリの額にそっと手を宛がった。 「大丈夫だ、なにもない。そもそもそんな大事なことの時間に遅れたら、看守がすっ飛んでくるに決まっている」  ああ、そうかと納得する。確かに、ゲストとの時間に遅れて、看守が黙っているわけがない。気のせいだったのだろうか? と思いながら、心地のよい甘さを吸い込む。  ……あれ、なにが気のせいなのだろう?  よくわからない上に、眠くなってきた。唸りながら目を擦る。 「寝ていていい。今日の夜勤者はティトだから、何事もなければ寝かせておいてくれるはずだ」 「ティト? 誰だっけ?」 「きみがいう“ノッポ”だ」 「あァ、ノッポさん」  ノッポさんなら安全だ。ノルマ族だけれどまだ若いこともあってかそんなにイル・セーラに偏見がないみたいだし、昼休みによく遊んでくれる。  この前は裏山のプラムの木に生っている実を採るのに肩車をしてくれた。ノッポさんは身長が3mあるとか、裏山を数歩で渡ってこられるとかセシリオ(A区にいる同年代のイル・セーラ)たちが言っていたのがわかるくらい、本当に背が高くなった気分だった。当然、プラムを勝手に採ったことと、そのまま走り回られたことで馴染みの看守から二人して怒られたけれど。  呼吸自体はまだ荒くて少し息苦しいけれど、ノッポさんならという安心感と心地のよい香りに誘われるかのように、すうと微睡みに落ちた。

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