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どうせみんなとおなじ食事が摂れないからと、夕方まで医務室で過ごすことになった。怪我をしてやってきたC区の友だち――シアンからものすごく心配された。でもシアンの足のほうがヤバい。どう見ても変色している。
「この内出血の具合から見ても、骨折している可能性があるね。しばらく労働は無理だ」
念のためにとSig.フィオーレがシアンの足にクリーム状の薬を塗り込む。かなり刺激的なにおいだ。
「痛み止めと炎症止めの効果がある。自分で塗れればいいけれど、きみたちに手渡せないからなあ」
Sig.フィオーレが言うことを、シアンは理解していない。きょとんとしている。Sig.フィオーレもまた不思議そうな顔をしたが、すぐにシアンの表情の意味に気付いたらしい。
「ユーリ、通訳してもらってもいいかい?」
『折れてるかもしれないから、労働は無理だって。あと、いまの薬は痛み止めと炎症止めらしい』
『治るのにどのくらいかかるんだろう?』
「治るまでどのくらいかかるかって言ってる」
Sig.フィオーレはうーんと考えるように言ったあとで、「2週間、本当に折れていたら1か月以上はかかるかなあ」とシアンの足を触りながら言う。
「そもそも捻っただけではこうはならない。追及はしないけれど、看守たちには無茶な労働はさせないように言い含めておくよ」
『2週間から1か月はかかるし、ただ捻っただけじゃこうはならないって』
そういうと、シアンが俯いた。首を横に振る。
『俺が悪いんだ』
その反応だけでなにがあったのかが分かった。マテウスだ。シアンは大人しいから、マテウスがC区の強制労働の監視をするときにはシアンにばかり無茶をさせる。ユーリは眉を顰めたけれど、彼の横暴さはいまに始まったことじゃない。
さすがに腹が立ってきた。でも、ゲストにやられた傷が癒えてせっかくここまで動けるようになってきたというのに、いまマテウスに絡まれたくはない。ユーリは敢えてSig.フィオーレにシアンの言葉を通訳しなかった。
まるでなにかを悟っているかのように、彼もなにも言ってこない。腫れた箇所を軽く触ると、シアンの身体が大袈裟に跳ねた。
「とりあえず、固定をしておこうか。歩くと体重がかかる部分だし、用心するに越したことはない」
Sig.フィオーレが足首を固定して縛るようなジェスチャーをして見せる。シアンはそれを見て頷いて、親指を立てた。
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