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 今日の診療医はユリウスだったらしい。シアンは同族だからということもあり、ユリウスには抵抗がないようだ。まだ目が醒めてないし、自分が処置をするのもなと思い、シアンをユリウスに任せて医務室に着いて行った。 「サヴァンさーん、大丈夫ですか?」  ノッポさんが心配そうにのぞき込むが、サヴァンは意外と平気そうだ。ユリウスに軽く処置をされた状態で椅子に座り込んでいる。 「問題ねえよ。それより、ヤクトは大丈夫な奴なのか?」 「さあ? ダメな奴なら、エゼットさんを落としたりしないと思うんですけどね」  あいつはよくわかりませんと、ノッポさん。ヤクトは悪い人ではないと思う。不機嫌なにおいはするけれど、マテウスやトサカのように黒くて錆臭いどろついた雰囲気がない。そうは思ったけれど、口には出さなかった。マテウスもトサカも嫌いだけれど、目の前であんなふうにぶっ倒される姿を見るのは、あまり気分がいいものじゃない。 「貴方はしばらくの間、激しい運動をしないように。傷が開かないように一応閉じはしましたが、場所が場所だけに動くと開きます」  かなり出血があったが、輸血や手術が必要なほどではないとユリウスが淡々と説明する。ただ急激な失血のせいでめまいやふらつきが起こる可能性はあると、ユリウス。サヴァンは「そんなものは言われなくてもわかっている」と冷静な口調で言ってのけた。ユリウスが処方した痛み止めを飲み、苦い顔をする。 「もっとマシな味の薬はねえのか、先生。あんたの処方薬はいつも苦いと看守たちからもイル・セーラたちからも不評だぞ」 「文句がおありならノルマの診療医に処方してもらってください。きっちり金をとられるでしょうけどね」  辛らつな物言いだ。ユリウスはあまりサヴァンのことが好きじゃないのか、帰り際に仕事を増やされて不機嫌なのか、さっきから妙なにおいしかしない。 「それで、なにがあったんですか?」  眠っているシアンの処置をしながら、ユリウス。さすがにパーテーションで仕切ってあるから、シアンの中からトサカの精液が掻き出されているところまではノッポさんたちには見えない。ユーリは一応ユリウスが余計なことをしないかどうか、パーテーションの陰から眺めていた。 「それが、エゼットさんとミーナさんがあの子をマワしている現場に遭遇しちゃって」  「C区の子たちの監視に戻るところだったんですよ」と、ノッポさんが言う。 「マテウスさんがいないのをいいことに、昨日もF区の老人をぶん殴ってけがをさせてるんだ。あんまりに横暴が過ぎるし、流石に骨折までさせるなんてヤバくないすか?」  ノッポさんが気炎を上げる。ユリウスはそれを冷めた表情で眺めながら、ユーリが予めつけておいたあの果汁と血、精液をふき取っていく。

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