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第102話
そんな二人を傍で見ていたイリエントとブラッドリー。
彼らは一先ずノアリスの様子に安心したあと、目の前で始まった二人のやり取りを他の者達に見せないよう、退室を命じ、そして少し呆れたように小さく息を吐く。
少し待っていようと思ったがしかし、なかなか二人は離れようとせず、ロルフもお時な欠伸をし始めた頃。
ついに痺れを切らしたイリエントが口を開いた。
「陛下、ノアリス様、そろそろよろしいでしょうか」
「っ!」
ノアリスの細い肩が驚いたように跳ねる。
「……っ、か、カイゼル様……っ」
慌ててカイゼルから離れようとするが、腰に回された腕がそれを許さない。
「何をそんなに慌てる」
どこまでも余裕のある声に、ノアリスの顔が一気に赤くなる。
「み、みんなが、見ています……っ」
「別に構わんだろう」
あっさりと言い切られ、言葉に詰まる。
その様子を見ていたブラッドリーが、わずかに肩を竦めた。
「構わなくはありませんよ、陛下。ノアリス様が困っていらっしゃる」
「しかし、困っている顔も可愛い」
即答だった。
「っ……!」
ノアリスがついに言葉を失い、顔を覆う。
ロルフがそんな様子を不思議そうに見上げ、「わふ」と小さく鳴いた。
「……はぁ」
イリエントが一つため息を落とす。
「陛下。少しで構いませんから、場を弁えていただきたい。医師も間もなく到着いたしますし、状況の整理も必要です」
「分かっている」
そう言いながらも、カイゼルはようやく腕の力を緩める。
解放されたノアリスはほっと息を吐き、しかし完全には離れきれず、彼の服の端をぎゅっと掴んだままだった。
「……愛らしいな。離れ難いか?」
くすりと笑われ、ノアリスはさらに赤くなる。
「っ……これは、その……」
「いい」
言葉を探すノアリスを遮るように、カイゼルは軽くその手に触れる。
「そのまま」
優しく、そしてどこか当然のように告げられた言葉に、ノアリスは小さく頷くしかなかった。
「……さて」
空気を切り替えるように、カイゼルの声音がわずかに低くなる。
「まずはイリエントの言う通り、状況の整理だな」
先ほどまでの甘さが嘘のように、場に緊張が戻った。
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