102 / 107

第102話

 そんな二人を傍で見ていたイリエントとブラッドリー。  彼らは一先ずノアリスの様子に安心したあと、目の前で始まった二人のやり取りを他の者達に見せないよう、退室を命じ、そして少し呆れたように小さく息を吐く。  少し待っていようと思ったがしかし、なかなか二人は離れようとせず、ロルフもお時な欠伸をし始めた頃。  ついに痺れを切らしたイリエントが口を開いた。 「陛下、ノアリス様、そろそろよろしいでしょうか」 「っ!」  ノアリスの細い肩が驚いたように跳ねる。 「……っ、か、カイゼル様……っ」  慌ててカイゼルから離れようとするが、腰に回された腕がそれを許さない。 「何をそんなに慌てる」  どこまでも余裕のある声に、ノアリスの顔が一気に赤くなる。 「み、みんなが、見ています……っ」 「別に構わんだろう」  あっさりと言い切られ、言葉に詰まる。  その様子を見ていたブラッドリーが、わずかに肩を竦めた。 「構わなくはありませんよ、陛下。ノアリス様が困っていらっしゃる」 「しかし、困っている顔も可愛い」  即答だった。 「っ……!」  ノアリスがついに言葉を失い、顔を覆う。  ロルフがそんな様子を不思議そうに見上げ、「わふ」と小さく鳴いた。 「……はぁ」  イリエントが一つため息を落とす。 「陛下。少しで構いませんから、場を弁えていただきたい。医師も間もなく到着いたしますし、状況の整理も必要です」 「分かっている」  そう言いながらも、カイゼルはようやく腕の力を緩める。  解放されたノアリスはほっと息を吐き、しかし完全には離れきれず、彼の服の端をぎゅっと掴んだままだった。 「……愛らしいな。離れ難いか?」  くすりと笑われ、ノアリスはさらに赤くなる。 「っ……これは、その……」 「いい」  言葉を探すノアリスを遮るように、カイゼルは軽くその手に触れる。 「そのまま」  優しく、そしてどこか当然のように告げられた言葉に、ノアリスは小さく頷くしかなかった。 「……さて」  空気を切り替えるように、カイゼルの声音がわずかに低くなる。 「まずはイリエントの言う通り、状況の整理だな」  先ほどまでの甘さが嘘のように、場に緊張が戻った。

ともだちにシェアしよう!