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第103話

 目の前で繰り広げられる会話を、ノアリスは静かに聞いていた。 「橋を守る戦いです。あちらは船も使って側面から崩そうとしている様子。しかし主力は橋に集中しています」  イリエントから淡々と行われる戦の肝となる橋の説明。   「武力を誇るデュラシアに対し、戦に慣れないフェルカリアではやはり押され気味です。我が国の兵士達は初めこそ援護に回っていたようですが、場数が違います。現在は最前線に立ち、押し返しを図っているとのこと」  ふむ、と頷いたカイゼルとブラッドリー。  少しするとブラッドリーが「それならば、」と言葉を落とす。 「我が第一騎士団も戦場に赴いた方が良いのでは? 指揮を執っているのは皇太子殿下であったと思うが、そんな状況であるのにここまでやって来るのは、些かどうかと思いますな」 「貴方が行ってどうなるのです。第一騎士団が動けば、こちらの守りが薄くなります」 「少なくとも、戦線を押し返すことができる。橋の防衛線を立て直せるはずだ」  イリエントとブラッドリーの会話を聞いていたカイゼルは、「──いや、」と低く声を落とす。 「第一騎士団は動かさない。ここを空ける気はない」 「ですが陛下。橋を取られてしまえば、もしくは船で大軍に渡られでもすれば、フェルカリアはひとたまりも無いでしょう。戦場にいる我が軍も、そうなると潰滅します」 「わかっている。だが、我らが第一に守らなければならないのは、フェルカリアではない。ルイゼンだ。同盟国ではあるが、だからといって他所の戦で我が国が危険に晒される可能性が少しでもあるのなら、ここの守りを最重要に考えなければならない」  冷酷にも見える王の姿に、イリエントはその通りだと頷き、ブラッドリーは渋々といった様子で納得する。 「代わりに、ここから指示を飛ばす。俺やブラッドリーが戦場におらずとも、ルイゼンの者ならばその指示が誰からのものかは検討がつくだろう。軍はまだ統制が取れている」 「……承知しました。ただし、状況がさらに悪化した場合は進言いたします」 「ああ。その時はそなたを頼らせてもらうぞ」  カイゼルがそういった時、コンラッドの「失礼します」と少し控えめな声が届いた。 「医者が参りました」 「ああ。──二人は一度外へ。ノアリス、少し医者と話をしよう」  静かにしていたノアリスを振り返ったカイゼルは、不安そうに瞳を揺らす彼を安心させるようにその体を抱き寄せた。

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