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第106話

 時間をかけてゆっくりと食べていたノアリスのもとに、カイゼルが戻ってきた。  そして、いつもよりも量も多く、さらには肉をも食べている姿を見て、安心したように笑顔を浮かべる。 「ノアリス、食事は取れたか」 「はい。……あの、このお肉が、とても、美味しくて」 「それはよかった。また作らせよう」  カイゼルはブラッドリーに目配せをする。ブラッドリーも小さく笑みを浮かべ、会釈をすると部屋を出ていく。 「ぁ、ぶ、ブラッドリー……!」 「はい?」  珍しくノアリスが少し大きな声でその後ろ姿を呼び止めた。  振り返った彼に、ノアリスはモジモジしながらも柔らかく微笑みかける。 「今日は、たくさん……ありがとう、ございました」 「! いえ。これも騎士の勤めですから」  そうスマートに返事をしたブラッドリーだったが、しかし本心ではかなり喜んでいた。  そしてこの後騎士の宿舎に向かい、浴びるように酒を飲んでいた姿を目撃されていたとか。    さて、カイゼルはここまで食事を取れるようになったノアリスを「すごいじゃないか」と言って励ますと、少し照れながらも誇らしげにする彼が愛しくて、そっとその頬を撫でた。 「デザートは食べられそうか?」 「食べて、みたいです」  小さくカットされたフルーツの乗ったケーキ。  フルーツがツヤツヤと輝いている。 「クリームは重たいかもしれないから、ひと口食べてみて、難しそうならフルーツだけでいい。残しても問題ないから、好きなように食べなさい」 「はい」  そんな彼の言葉に甘え、ノアリスはまずはクリームやスポンジごとフルーツにフォークを刺して、ひと口食べた。 「──わ……!」 「……美味いか?」 「はい……! 甘くて、すごく……」  嬉しそうな表情に、カイゼルもつられるように口角が上がる。 「か、カイゼル様……!」 「うん、なんだ」  そばにいたカイゼルを控えめに呼んだノアリスは、少し頬を紅潮させている。 「カイゼル様も、お召し上がりになりませんか……?」 「俺は──」  あまり甘いものが得意では無いカイゼル。しかし、ノアリスが期待した目をしていることに気がついた。手にしているフォークには一口分のケーキが乗せられていて。  少し考えたカイゼルは、ノアリスのフォークを持つ手を掴むと、そっと自身の方に引き寄せ──そのまま、ぱくりと口にした。 「うん。美味いな」 「ぁ……!」  まさか、彼がそんな風に食べると思っていなくて、ノアリスは恥ずかしそうに視線を逸らす。 「俺はいいから、あとは好きなだけ食べなさい」 「っは、はい」  そうしてチマチマと食べていたノアリスだが、眺めていたカイゼルはその小さな口元にクリームが付いていることに気がついて。 「ノアリス」 「はい……? ──ンッ!」  顔を寄せられ、唇にチュッと柔らかくキスをされる。かと思えば、唇の端を舐められて、いよいよ沸騰するかのように顔を真っ赤にさせたノアリスは、驚いた表情のまま固まった。 「クリームが付いていた。……可愛いな」 「ぁ……ぁ、す、すみ、ませ……っ」  俯いたノアリスは、心臓を激しくドキドキとさせていた。

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