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第108話

 カイゼルに案内された彼のベッドに寝転がるノアリスは少し緊張していた。  一度は朝まで一緒に眠り、つい先日は眠る彼の隣でうたた寝をしてしまったのを思い出す。  コンラッドから小さな箱を受け取ったカイゼルは、その蓋を開けクンと匂いを嗅ぐと、それをノアリスの顔に近づけた。  どうやはそれはクリームらしい。 「この香り、どう思う?」 「どう……? ん、優しくて、落ち着く香りだと、思います」  戸惑いつつも感想を口にしたノアリスに、彼は満足そうに頷く。 「足を揉む時はクリームがある方が摩擦が少なくなって良いらしい。保湿もできるから一石二鳥だな」  彼はそう言って少しクリームを手に取ると「触るぞ」と、ノアリスの細い足に触れた。  足の裏から、甲へ、そして足首に触れて、ふくらはぎから膝まで上ってくる。 「んっ……」 「痛むか?」 「いえ……気持ちいいです……」 「よかった。眠ってもいいからな」 「……はい」  次第に体から力が抜けていく。  こんな風に気持ちいいのは、初めてかもしれない。しかしそれを一国の王であるカイゼルにしてもらっているのだから、申し訳なくも感じる。 「──ぁ、」 「……?」  不意にカイゼルが声を出した。  そしてゴホンと咳払いをする。 「ノアリス、恥ずかしいことじゃない、そのまま、目を閉じたままでいいから聞いてくれ」 「……? はい……」 「きっと緊張が解れて、心身共にリラックスしてくれているんだろう。……体が反応している」 「……反応?」  閉じていた目を薄らと開けたノアリスは、そのままカイゼルの方に視線を向けたのだが── 「……あ、」  自分でも分かってしまった瞬間、思考が止まる。  自身の股間部分が膨らみ、熱を持っている。  慌てて隠そうとしたがしかし、カイゼルに足を掴まれていてそれができない。  体を起こして目立たないように背中を丸めた。 「も、申し訳、ありません……っ!」 「何を謝ることがある。安心してくれたんだろう。嬉しいぞ」 「〜っ、で、ですが、こんな、破廉恥な……!」 「大丈夫だ」  足から手が離れ、ギュゥっと抱きしめられる。  額に唇が触れ、恥ずかしさから涙がうかぶ瞳で彼を見上げると、今度は唇にキスが降ってきた。 「俺としては──こういう風にノアリスが反応してくれて、俺には気を許してくれているようで、むしろ幸せに思える」 「っん、」  唇が重なる。  何度か、触れるだけの優しい口付け。 「……だから、落ち着いて」  囁かれて、また一度、触れる。そのまま、ほんの少しだけ深く重なった。  驚いて咄嗟に離れようとしたのだが、優しく後頭部を支えられ、逃げることはできなかった。

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