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第136話
フェルカリアの王が逝去した報せは、もちろんルイゼン国にも届いていた。
そして、ルーヴェン皇太子が国王になったことも。
「イリエント!」
「はい。こちらにおります」
執務室。カイゼルはイリエントを呼び出した。
あまりにも不可解な点があったからだ。
「この現状をどう思う?」
「……忍ばせてるものによれば、王がたおれられて逝去が発表されるまでは時間があったと。しかし、皇太子殿は構わず即位の準備をなさり、下手人も処刑と方向で調整されていたのだとか」
「……やはり、皇太子が仕組んだことか」
「さすがに……父を殺しますか……?」
イリエントの言葉に、カイゼルは薄く笑う。
「やるさ。目的があるのなら、迷いは無い。やつはきっと、ノアリスを奪いに来る。同盟なんぞ邪魔で仕方がないものはきっと、王になってすぐ撤廃するだろう。そしたらどうだ──我が国と戦だ」
「……我が国と、フェルカリアが戦だなんて……勝敗は見えています。間違いなく、フェルカリアが痛手を負う」
「ノアリスを奪うための戦だ。誰も、真正面から取りに来たりしない」
いつ、どのタイミングで、どうやって。
カイゼルは俯き深く息を吐いた。
ルーヴェンの持つ、ノアリスへの執着は、あまりにも異常だ。
あれは卵のせいなのか?
確かに、卵があればどんな傷をも治るのだろうが、それだけで国を揺るがすようなことを起こすのか……?
「……皇太子……いや、フェルカリアの王は、ノアリスに飢えている」
「……は?」
「奴は……俺と同じだ。ノアリスを愛している」
「っ、兄弟ですよっ? 血の繋がった兄弟です! そんな……陛下がノアリス様に想う愛とは別物でなければ悍ましい他ありません!」
はは、っと乾いた笑いが漏れた。
カイゼルは、片手で目元を覆うとゆっくりと息を吸う。
「だから、奴は異常なんだ。常識でものを考えてはいけない。……さて、俺はまだ平和な城下で、ノアリスと初めてのデートでもするかな」
「陛下!」
「安らぐ時間も必要だろう。そうすぐに動きやしない。こんな警戒されている時に、フェルカリアのものが来てみろ、"戦でも起こす気か?"と俺は剣を抜いてしまう」
そう言って笑顔で立ち上がったカイゼルだが、イリエントは心配でならなかった。
常識が通じないのなら、何が、いつ、起こるかなんて予想すらできないからだ。
「どうか護衛を多く連れて行ってください」
「そうだな。いや、まずはデートに誘いに行かねば」
「! 誘ってもなかったのですか!」
「そりゃ……ノアリスの耳にも父親が亡くなったことは入っているだろう。ほんの少しでも思い出す時間が必要だと思った。……まあ、あの父親だ。振り返る思い出もきっと瞬きの間に無くなるだろう」
「……。ノアリス様に怒られますよ」
「! それはまずい」
口を閉じたカイゼルは、しかし先程よりも柔らかい表情をして執務室を出る。
少しでもノアリスの前で厳しい顔を見せたくなかった。
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