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第139話
護衛には五人もの兵士が変装をしてついてきていた。
決してノアリスにバレないように、さりげなく町人を装って。
チェシナのお店でカイゼルの好物であるお菓子が運ばれてくる。
それは茶色いチョコレートが含まれた、分厚いパンにも見えるしっとりとしたもの。そこにはたくさんのナッツが入っていて、その上にはフルーツが乗った、初めて見るものだった。
「カイゼル様は、甘いものは、好きなのですか……?」
「あまり得意ではないが、ここのは別格だ」
差し出されたフォークで、一口サイズに切ってみる。そうして恐る恐る口の中に入れたノアリスは、あまりの美味しさに目を見張った。
「! お、美味しい……!」
「そうだろう」
初めは味覚すら奪われていたのに、今では回復してしっかりと食事を取れるようになった。
まだこの味をなんと表現すればいいのかは分からないが、それでも美味しいのだけはわかる。
「これは、なんと言いますか……っ?」
「それを聞いてもチェシナは教えてくれないんだ。真似をされては困ると言ってな」
「ぁ……確かに、そうですね……」
真剣なノアリスの表情に、カイゼルも嬉しくなる。
少し離れたところで見ていたチェシナは、嬉しさに目に涙を浮かべていた。
「またひとつ、幸せを、知りました」
「ん?」
「カイゼル様と逢瀬をして、チェシナさんのお店で、こんなに美味しいものをいただけて。さっきおばあ様からも飴をこんなにいただいたんです。あの時からは、考えられなかった、幸せです」
食べ終えたノアリスが飲み物で喉を潤し、そう言う。
幸せだと、感じてもらえたこと。
カイゼルはそれが何よりも嬉しくて、たまらなかった。
「ノアリス」
「はい」
「……愛してる。今までも、これからも、ずっと。未来永劫だ」
「っ!」
ノアリスの頬が真っ赤に染まる。
少し目を逸らした彼は、しかしすぐに目線を合わせた。
「私も、です」
そう言って口元を抑えるその姿を、カイゼルも、影から見ていたチェシナも、まるで天使でも見たかのような穏やかな表情で眺めていた。
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