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第141話
広場では相変わらず賑やかな音楽に踊りが続いていた。
子供によじ登られてんやわんやしていたカイゼルは、そのうち「俺は王ではなかったのか……?」と自問し、「いいや、この平和を作ったのは確実に王である俺だ」と自答していた。
楽器がもたらす心も踊る音色。
噴水から溢れる水に、その水面に子供たちが花を浮かべている。
さて、ノアリスはどう楽しんでいるか。
そう彼の姿を目に入れようとした時だった。
「──陛下」
護衛の一人が声をかけてきて、カイゼルの顔色が変わる。
「ノアリス様のお姿が消えました。子供達と遊んでいたのを最後、木々の方に進まれたのですが、多くの子に道を塞がれてしまい……!」
「……」
ジッと広場を見渡したカイゼルは、全て仕組まれていたことか。と子供をも使ったルーヴェンの汚しさに感嘆する。
「……音楽を止めよ」
「……え」
「聞こえぬのか? 音楽を、止めろッッ!!」
カイゼルの怒号が響き渡る。
きっともう、ノアリスは連れて行かれている。ここでなりふり構わず追い掛けたとて、意味がない。
考えなくては。考える時間が、必要だ。
「ノアリスと踊っていた子供たちを城に連れてこい。一人も漏らすな」
「はっ──」
「他の護衛を呼べ。そして国を封鎖だ。イリエントを直ぐに執務室に呼べ」
「く、国を……」
「王妃が攫われた。この非常事態に、国を封鎖できぬと言うのか」
「い、いえ! すぐに!」
その日ルイゼン国の国門が封鎖された。これは前国王陛下の時代を含めても初めてのことだった。
間に合うのなら、この国の中に閉じ込めて、ノアリスを連れ戻したかったからだ。
怒気を纏ったカイゼルが城に戻った時、イリエントは最悪な事態が起こったのだと既に察して、各大臣と将軍であるブラッドリーを呼び出し、会議室に待機させている。
まずは呼び出された執務室で主を待っていたイリエントを、カイゼルは強い目で見た。
「子供を使われた」
「……汚いことです」
「ノアリスを早く、助けたい」
「国門を閉じるよう命じられたとのこと」
「運が良ければ、ルイゼンの中で見つけられる」
「……そんなヘマはしないでしょう」
いつもより冷静さを欠いている。
イリエントはゆっくり息を吐くと、「カイゼル陛下」と珍しく、彼の名前を呼んだ。
「まず、我々ルイゼンはフェルカリアと同盟国。間もなくこの同盟が断ち切られるでしょう」
「……」
「そして、恐らく、フェルカリアはノアリス様を奪われまいと、以前いらっしゃった分かりやすい塔ではないどこかに、隠されています」
「……だから、なんだ」
わかりきったことを説明されても、腹が立つだけだ。
カイゼルはギロッとイリエントを睨みつける。
「戦を起こすのはよろしい。私も賛成です」
「ならば作戦を考えろ」
「しかしながら、少し冷静になりなさい」
厳しい声色に、カイゼルはただ静かに呼吸をする。
「ノアリス様を奪還するのはもちろん、フェルカリアという国を滅ぼそうとする戦です。貴方様が冷静でなく、どうするのです」
「……」
「子供達も集めていると聞きました。証言を得るのは構いませんが、痛めつけることは許しません」
正しいことしか言わない彼に、カイゼルは焦っていた心を静かに落ち着けていく。
深く息を吐けば、怒気が僅かにおさまり、ようやくいつもの王たる堂々とした姿に戻った。
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