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第142話

 会議室に行けば、主要な人物たち全員が揃っていた。  静かに腰をおろしたカイゼルは、ひとつ息を吐く。 「間もなく、フェルカリアが同盟の破棄を申し出るだろう。我々はそれで構わぬ。しかし、ノアリスが攫われた。このままでは許さん。同盟が破棄されたと同時、もしくは戦の準備が完了する七日、この間にノアリスの帰還がない場合、我々はフェルカリアを滅ぼす作戦に出る」  静かなカイゼルの覚悟に、皆が頷いた。   「フェルカリアに突入した際、敵とみなすのは兵士と大臣、そして城にいる者達と、皇族──ルーヴェン王だけだ」 「……それでは、」 「国民は、巻き込まれただけだ。手を出すな、傷つけることは許さない」  そこまで黙って聞いていたブラッドリーが、そっと手を挙げる。 「ノアリス様は──」 「ノアリスはどのような状態かもわからない。まずはその状態から酷くならないよう、保護した上で連絡を」 「承知しました」  彼も、まるで自分の息子のようにノアリスを慈しんでいる。  初めて会った当初は間者なのではと僅かに疑っていたその心を、今では酷く恥じているほどだ。  何があったのかを、詳しくは知らない。  しかし、実の兄にあれほどまでに怯える姿をこの目でしかと見た。  そんな兄が王となった国へ連れ去られたのであれば、それは許されることではない。 「ノアリス様を保護し、可能な限り早く戦線を離脱、そしてルイゼンに戻ります」 「そうしてくれ。ノアリスはきっと今、何もかもに脅えているはず。……そうだ、顔を知る人間がいる方がいい。ノアリスを見つけ出したものたちは、俺か、イリエント、そしてブラッドリーに報告すること。勝手にその体に触れぬように」  怯えて混乱させ、最悪の場合自死を選ばれでもしたら。  考えるだけで心が震える。  カイゼルはグッと手を握ると、イリエントとブラッドリーを見た。 「戦の準備を。容赦はいらない。」 「はい」 「御意に」  会議から、軍議に移動する。  どのように攻めるか、どのように城を崩すか。  そして、どうやって民の心をこちらに傾けさせるか。  主を殺し、力で民を掌握するのは簡単だがしかし、それでは平和は訪れない。  幾つもの戦を経験しているルイゼンのもの達はそれをしっかりと理解している。  なにか餌はないか。  なにか、なにか、なにか。  そうこうしているうちに、月が輝き、さらには太陽が昇り、空に星が幾つも広がり、そして新しい影が生まれた。 「二日が、経ったな」 「……ええ。すこし、きゅうけいを」  ソファにドサリと倒れるように座ったカイゼルとイリエント。  それぞれが目を閉じて、今にも眠りに落ちそうだ。  二人はあれから一度も眠っていない。  カイゼルは休む、目の奥に泣いているノアリスの姿が浮かび落ち着けないでいた。  そしてそんなカイゼルが暴走しないよう、イリエントは見張っていたのだった。

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