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第144話

 男を下がらせたあと、同じ謁見の部屋に入れられたのは多くの子供たちだった。  あの日、ノアリスを騙してフェルカリアに手を貸した幼子たち。  傍らには両親がいて、全員が跪き額をも床につけている。 「──陛下、彼らがフェルカリアに手を貸し、ノアリス様を誑かした者たちです」  イリエントの声に、子供とその両親が小さく息を飲む。  これから行われるのは尋問か、処刑か。  カイゼルはジッと子らを眺めていた。  その中でも一際、震えている子供をみつけ、足音を立てながら近づいていく。 「おい、娘」 「っ! ひっ」 「顔を上げて、名を名乗れ」 「……っ、ぁ、り、リリー、と、申します」 「リリー」  ゆっくりと目線の高さが同じになるよう片膝を突いたカイゼルは、静かにリリーを見つめた。 「ノアリスと最後に言葉を交わしたのは、そなたか?」 「っ、な、なぜ……」 「そうなのだな? ノアリスは……俺の妻は、なんと言っていた」  聞けば、娘は涙を流して平伏した。   「だ、大丈夫、だからと……っ! 誰にも、言わなくていいから、おうちに、おかえりと……っ」 「っ、」  大丈夫なわけがあるまい。  カイゼルはギリッと奥歯を噛むと、ゆっくり立ち上がる。どこにもやれない苛立ちにおかしくなりそうだった。 「そなたらは、フェルカリアに手を貸した。それは、何故か」  代わりに、問うたのはイリエントだ。  カイゼルはただ彼らの言葉を静かに聞き、流しそうになる涙をぐっと堪えた。  妹が捕まった。家族が危ない。お金を貰える、そうすれば薬が買える。  みんな、利用されたのだ。  この国は豊かであるが故に、ほんのひと握りの貧しい人間にはあまり手が届かない。  手を伸ばしてくれたのならば、助けられるすべはあるというのに。  しかし、その弱い部分を突かれてしまった。 「陛下、この者たちの罰は如何なさいましょう」  イリエントはわかっていて、そう言った。  彼らは何も知らない。何も知らなかったのだ。  だからこそ許されるわけではないが、しかし、既に彼らの処罰については事前に決めていた。 「──不問とする。しかし、貧しさに飢えて罪に手を染めるくらいならば、役所に申し出なさい。我々には差し出せる手がある。それを頼らずして悪人となるな」  冷静に淡々とそう言ったカイゼルに、子供もその両親も涙した。  大切な人が奪われたと言うのに、それに手を貸したと言うのに、なんと慈悲深い王様だ。  この国に生まれ、この王の元で暮らせていてよかったと、今この瞬間、深く思えたのだった。

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