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第148話

 そうして東の部屋に向かったカイゼルとイリエント、そして前後を固める兵士達。  一つだけ豪華絢爛な扉があり、そこを蹴り破るように開けると、中にはルーヴェンが立っていた。 「もう来たのか。さすがルイゼン、兵士の質が高い」  何ひとつとして恐れるものは無いとか、彼は飄々とグラスに水を注ぐと、それを飲み干した。 「ノアリスを返してもらう」 「何をふざけたことを。ノアリスは、フェルカリアの王子。ルイゼンのものではあるまい」  薄く笑うルーヴェンに、カイゼルは一歩前に出た。 「ノアリスは俺の妻だ。俺の、生涯の伴侶。確かにルイゼンのものでは無いな。俺のものだ」 「──貴様ッ!」  胸ぐらを掴んできたルーヴェンを、カイゼルはそれでも涼しい顔をして見つめる。 「初めからこうなると、薄らわかっていた。ノアリスをそなたが簡単に手放した時から。しかし、まさか……こんな姑息な手を使って攫うとは、思わなかったがな」 「姑息だと?」 「ああ。そなたはきっと、前王……お父上殿も殺したのだろう? そうして今、王の座に着いた。しかし残念なことに、ここの使用人は誰一人としてそなたを庇うことがなかったぞ?」 「……は?」  カイゼルはくくっと笑う。  まるで煽るように。時間を稼ぐように。  その間にイリエントが部屋を見渡しているのだ。 「市民には手を出さない、これが我らルイゼンのルールだからだ。しかしこれを口にした途端、使用人達はその場で制服を脱ぎよった。肌着姿になって逃げていったぞ? 間抜けな、形だけの王よ。気分はどうだ」 「っ、黙れ──ッ!!」  ルーヴェンはそう言うと、袖に書くに持っていた小刀をカイゼルの胸に振り下ろした。 「陛下──ッッ!」  イリエントの声が聞こえる。  兵士は急いで二人の元に行くと、ルーヴェンを拘束し床に押さえつけた。 「陛下、その傷は、内蔵には達していますか」 「……そのような感覚は、ないが……少し、呼吸がしにくい」 「肺を損傷したか……いや、でも立っておられる……」 「っ、今は、それは置いておいて、ノアリスを、探せ」 「ええ。ノアリス様はこの奥です」  床に押さえつけられていたルーヴェンが「は?」と乾いた声を漏らした。 「このクローゼット、先程まで開けていたのか、布がほら……扉に挟まっております。急いで閉めたか、面倒臭がりか……腐っても王族です。後者の可能性は少ない」 「っは、そ、そうか。それで、ノアリスを、連れ出せるのか」 「ええ。鍵もありません。少しお待ちを」  苦しげな呼吸をするカイゼルの横で、飄々とするイリエント。  そしてそんな彼らを焦りながら見つめるルーヴェンは何度も王族らしからぬ「クソっ」という言葉を繰り返していた。

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