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第151話
そんな中、ノアリスが息を切らし兵士と共に戻ってきた。
その手には小瓶が握られており、ノアリスは冷や汗をかきながら、震える手でそれをイリエントに渡す。
「っこ、これは、わ、たしの、卵から、できた……薬……」
「……」
「これを、使ってください。きっと、きっと助かるから」
「……しかし、ノアリス様、それを陛下が良しとするか──」
つまりは、カイゼル以外の男と交合ってできたもの。これは同意の上ではないことだから、ノアリスにとっては嫌な記憶でしかないが。
「でも、助かるのなら……っ、お願いです。後で、私がお叱りを受けます……っ」
その頃にはもう、カイゼルの意識は無かった。
浅い呼吸だけが聞こえている。
イリエントは、少し考えたあと「わかりました」といって、その小瓶をカイゼルの口元に付け、ゆっくりと飲ませていく。
それが空になると同時、カイゼルの呼吸音が穏やかになったのが分かった。
服を捲れば、傷ついたはずのそこも、血すら流れていない。
「──ノアリス様」
「は、はい」
「この薬、残りはどこに?」
「ぁ……これ……残っていたものは全て、持って、来ました」
ノアリスの手の中、そして、兵士の手の中にも小瓶がいくつかあった。
イリエントはホッとしてその小瓶を回収する。
「これは見られてはいけません。後ほどルイゼンに戻ってから、話をしましょう」
「っは、はい」
「──さて、いい加減に起きてもらわければ」
横たわりまだ眠るカイゼルを心配げに見下ろしたノアリスは、突然イリエントがその額をペシンと叩いたことに目を見開いた。
「い、イリエント……っ!?」
「陛下、起きなさい! そして勝利の宣言を!」
ゆっくりと目を開けたカイゼルは、ぼんやりと、周囲を見渡したあと、最後に涙を流すノアリスを見て柔く微笑みながら抱きしめる。
「待たせてすまなかった」
「っ、いいえ、そんな……っ」
ノアリスの涙がカイゼルの服を濡らす。
しかしそんな穏やかな時間を、宰相が許すはずもない。
「早く勝利の宣言をなさってください! 無駄に命を奪わせるな!」
「わかっている!!」
カイゼルも言い返しながら、立ち上がる。
「ルイゼンの者たちよ! 我らの勝利だ!!」
その声は大きく響いた。
戦っていたフェルカリアの騎士は武器を捨て、ルイゼンの騎士たちは勝利の雄叫びを上げる。
長く続いていた、密かなる戦いが、ようやく今、終わりを告げたのだった。
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