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第152話
◇◇◇
戦の後処理を終わらせ、ルイゼンに戻ったカイゼルは、その間にイリエントに聞かされた"自身の傷をどう癒したか"という方法に少し拗ねていた。
助けられた命だ。文句を言うのは甚だおかしくはあるがしかし、納得したくない部分もある。だがそれをノアリスにぶつけるのも違うので、今回は我慢に徹することにした。
「しかし、あの卵」
「卵?」
「陛下は意識が朦朧とされていたのでご覧になってないと思いますが、確かに──生きていました」
「……あの、一つだけ光が轟いていたというやつか?」
「ええ。ルーヴェンはあれを大切に守っていたのです。いつか生まれて、育てるために」
ルーヴェンはその後、誰に許されるはずもなく処刑された。
その事実をノアリスが知れば悲しむだろうと、『遠くに送って、もう会うことは無い』と有耶無耶に伝えている。
そして国王も滅びたフェルカリアは、そのままルイゼンの領土となった。
「生まれた姿は人にも似た何かでした。恐らく、近親相姦が原因だと、私は推測します」
「……」
「ですから、陛下。私はノアリス様がお許しになるのであれば、お世継ぎの可能性はあると思います」
はぁ、と深く息を吐く。
戦が終わり、後処理が終わり、ようやく一息がつけるというのにこの話。
呆れて何も言えないカイゼルに、イリエントが眉を寄せる。
「そんなお顔をなさいますが、今回、ノアリス様がくださった薬がなければ危ういところでした。……まあ正直貴方様が死ぬとは思いませんが……仮にお亡くなりになったとして、お世継ぎがいなけらば、国は目標を失います」
「……これは、少し前に卵の話が出た時、考えたことだが」
「はい?」
イリエントは小首を傾げ、紅茶をひとくち飲んだ。
「妾を、使おうかと」
「!」
「しかし、俺はノアリスが正室だと宣言する。……そうだ、その儀式を取りはからわねばならん。準備しろ」
カイゼルは思い出してすぐ、どのような衣装をノアリスに送ろうかと、胸をワクワクさせている。
「え、ええ。わかりました。しかし陛下、妾姫様はどうするのです? 側室ですか? お子が……王子が生まれたら──」
「王子は王子だ。妾は側室で、ノアリスが正室。それは何ひとつとして変わらん」
「……そんな筋の通らない話がありますか……」
「筋なんぞ通さなくて良い。俺が王であり、俺がルールだ」
呆れたように息を吐いたイリエントを無視し、カイゼルは続ける。
「仮に、ノアリスが"良い"と言っても、すぐに卵ができて、しかもそれに命が宿るとは限らない」
「それはそう、ですが……」
「幾度となく苦しい思いをしてきた。そんなノアリスに再び苦しめとは、到底言えまいよ」
しかし、妾のことは伝えておかないと、後々ノアリスが辛くなってしまう可能性がある。
今夜は久しぶりにゆっくりと共に眠れる日。その時に、しっかりと話すことにした。
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