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第161話

「仲睦まじいのはよろしい。しかしながら、政務は行っていただかないと。この平和を守りたいがために、おふたりは伴侶となったのでしょう?」  正論には全く反論することもできず、二人は静かに頷く。 「ナディエル王子は本当に……いつもああして逃げ回っては、隠れたり木に登ったり……」 「俺よりは随分とマシだな」 「ええ。陛下はもう五つにもなった頃には剣を握り、勝手に城を飛び出しては平民の子と遊び、木に登ったり山に入り泥だらけになったり……擦り傷だらけになってましたから」  ノアリスはポカンと口を開けて、カイゼルを見る。 「もしも外に出てしまっても、きっと戻ってくる。大丈夫だ。俺にはその経験があるからな。きっとナディにも帰巣本能が備わっている」 「そのようなこと、聞いておりませんが」 「本当だぞ? 少しすれば戻ってくるさ。戻ってこなければブラッドリーを走らせる」 「ブラッドリーも仕事が」  ははは、と笑うカイゼルに、ノアリスは不安げに瞳を揺らした。 「そもそもだが、なぜ皆、子供一人を見張っておけない? 世話係はどうした」 「私はそれを陛下に問いたいですね。幼い頃、どうやって世話係の目を盗み外に飛び出していたのです?」 「……」 言い負かされたカイゼルにノアリスはクスクスと笑う。 しかしそうしているうちに再び「ははうえー!」と服を汚したナディエルが走ってきた。手には蛙を掴んで。 「ひぃっ!」 「……ナディ、蛙は庭に返してきなさい。そして手を洗って、着替えを済ませなさい」 「ちちうえ!」 「ああ。父は怒っていないが、イリエントが怒っている。見ろ、この顔。鬼のようだ」 「失礼な」 「鬼ー!」 「! ナディエル様ーッ!!」  走っていったナディエルを追いかけるイリエント。  そんな彼らの前に現れたブラッドリーは、ナディエルに助けを求められて彼を抱き上げる。 「王子様、今日は何をしたのですか」 「カエル! 捕まえた!」 「おお、素晴らしい。ところで何故、イリエントは怒っているのです?」 「鬼!」 「ほぉ。イリエントが鬼に化けるようなことをしてしまったのですね?」  ブラッドリーは笑いながら、蛙を庭に逃がしに行く。  そして泥で汚れたナディエルの手を洗わせ、服を着替えさせると、そのまま着いてきていたイリエントにヨイショと彼を渡した。 「ああっ! ブラッドリー!」 「あとはイリエントに叱られましょう。悪いことをすれば、怒られてしまいます。それが道理なのですよ」  ブラッドリーはそう言って自身の仕事に戻っていく。  イリエントは息を吐きながら、(もしや、彼が一番まともなのか?)と今まで思いもしなかったことを考えながら、ナディエルを部屋に連れて戻った。

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