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39.深部まで ※

 ゆったりと腰を動かせば、クロードの甘い声が鼓膜を揺さぶる。ふっと漏れた息のまま、眼下にある華奢な背中に吸い付いた。それだけでも気持ちが良いのか、クロードのナカがびくびくと震える。  嗚呼、たまらない。クロードのこんな姿を見れるのは自分だけ。それが至上の満足感を胸に呼び起こしてくれる。  肩甲骨に淡く噛みつきながら、イイ所の近くを擦るように腰を動かす。クロードが全身を震わせて、自分からイイ所に当てようと無意識に腰を動かしているのが見えて、また笑い混じりの息が漏れる。  いつもだったらこのままソコを抉って、何倍もの快感を与えるけれど、今日は駄目だ。意地悪をしたいわけじゃない。でも、ダンテには聞きたいことがある。気持ちよくする代わりに、クロードの胸の内を暴きたいのだ。  腰を止めたことに気付いたのか、クロードがやおら身体をひねるようにしてダンテを見た。その表情は甘い快感でドロドロに溶けているのに、まだ足りないと言いたげだ。たっぷり溜まった涙に濡れた瞳が、恨みがましい光を宿している。   「クロード、きもちい?」  素知らぬふりをして尋ねれば、クロードは僅かに視線を彷徨わせた。まだ少しだけ残された理性と羞恥からか、もっと強くしろよ、とは口に出さないらしい。腰を掴んだダンテの手の甲を、誘うようにクロードのそれが撫でる。  いじらしさに、思わず頬が緩んだ。  もっと激しくして良い、という意味なのは分かっている。いつもだったら誘いを断る理由はない。でも、今日はあるのだ。  手の甲を撫でるクロードの手を捕まえて、指先にキスをする。視線を合わせたまま、指先にじっとりと舌を這わせた。びくびくと震えるクロードに笑んで、話を切り出した。 「ねえ、クロード。僕、教えてほしいことがあるんだ」  彼の肩が小さく跳ねる。快感で呼び起こされたものではないそれ。本能的に逃げようとした腰を、掴んだままの手で制して、イイ所を押しつぶすように体重を上乗せしていく。 「~~ッ、ぁ、だんてっ、まっ、てッ」 「アンリとかいうあの男、アンタにとっての何?」  急に快楽で染め上げられて、受け答えもままならないクロードを見ながら、律動を再開する。軽く達したのが、締め付けてくるナカのお陰で存分に分かる。さっきまで与えなかった強すぎる刺激は、高められた身体には毒だろう。それを分かっていながら、喘ぐクロードにさらに問いかける。 「ただの兄貴って、アンタはいったけどッ、それだけじゃ、ないって思うんだ。だから、おしえて?」  年下らしく可愛くおねだりをしながら、絶頂寸前で一度完全に己の陰茎を抜き去る。寸止めされるとは思っていなかったらしいクロードが、完全に乱れた呼吸のまま言った。 「……ッ、? な、んで?」  その『なんで』はどちらのことだろう。  途中で止めたことに対してなのか、おしえて、と言ったことに対してなのか。判断がつかないまま、クロードの身体を反転させて仰向けにする。ゆらゆらと栗色の瞳が、不安げに揺れていた。安心させるように頭を撫でてから、口を開く。 「アンタの、誰にも見せないことが知りたいんだ」  言葉の意図を測りかねているのか、クロードはわずかに首を傾げた。そんな彼に小さく笑ってから、手のひらで彼の胸の真ん中、ちょうど心臓の真上に触れる。  おおよその人間が、心の在処を問われた時に指す場所。  そこに彼が隠しているものが、知りたい。全てを知ったところで何にもならないかもしれない。それでもいい。クロードが埋まらない虚を隠して抱えて、たった一人で悲しむくらいなら、聞けたほうがずっと良い。 「アンタが隠してるモノ、僕だけに見せて。ねぇ、おねがい。クロード」  神になんて祈ったことはないけれど、己の声がその必死さに似ていた。懇願だ。他でもないクロードだけに乞い願う。  クロードが、息を零して小さく笑った。よく聞いていなければ、吐息と聞き間違えてしまうほどの微かな笑い声だった。 「……ったく、ほんとにおまえってやつはさぁ」  ぐずぐずに溶けた表情に笑みが乗った。挑発的な笑みではなく、赤ん坊が見せるような無垢な笑みだった。  不意にクロードの手が持ち上がる。差し出されたのは、左手小指。目を瞬かせるとクロードが可笑しそうに、約束、と言った。 「とびきりきもちよくしてくれたら、おしえてやるよ」  ガッと強く心臓を鷲掴みされたかと思った。  全てを許してくれている、と思わせる屈託のない笑みに心臓がダメになるところだった。  いつだって先回りされて勝てない。悔しい。でもそれ以上に、クロードの笑みが心臓のもっと深い場所に突き刺さったから。  小指を強く絡ませて、うん、と頷く。  その声が湿っていたのが、自分でもわかった。きっとしあわせというのは、この瞬間のようなことを言うのだろう。『しあわせ』なんて言葉が陳腐に思えるくらい、あまりにも熱くて、膨らみ続けて破裂してもいいと思えるほどの愛おしさが、胸を駆け巡っている。  その想いの全てが、血潮に乗って全身へ巡って、クロードに与える全てに込められて、彼に伝わったらいいのに、なんてバカなことを思った。  クロードの背中に腕を回して、ゆっくりと抱き起こす。そのまま向かい合うようにして、ダンテの為だけに開かれた秘部に先端をピタリとくっつけた。  一度持ち上げた視線の先。  クロードが顔を綻ばせていた。目が合うと、一層目元を緩ませて、彼は口を小さく動かす。 ――ダンテ、来い。  多分音にはなっていなかった。でも確かに、ダンテには聞こえた。  赦しを得た獣は、もう止まれない。ダンテだけを受け入れてくれるその秘部に、血管が浮き上がるほど太い陰茎を埋め込んでいく。 「~~~ッ、あっ、ッ、ふ」 「ぐっ、……っは、」  脳を揺さぶる様な甘い嬌声。ぎゅうぎゅうと締め付けてくるナカ。強い締め付けに、今にも達してしまいそうだ。  どうにか耐えながら、細く息を吐く。背中を支えていた手を滑らせて、両尻を柔く掴む。一ミリだって傷付けないように。意識を集中する。双丘を割り開くように両側に広げて、出来る限り深く繋がれるように奥に、時間をかけて突き立てていく。  全部収め切ってやっと、ダンテは息を吐きながら顔を上げた。 「クロード、痛くない? ……ッ!」  思わず体の動きを止めてしまった。己の寄りかかっているクロードが、腰も体もビクつかせていたから。声も届いていないのか、返事はない。そっと肩を掴む。 「ぅあッ、ぁ、ン」  か細いのにとびきり甘さを孕んだ声が、鼓膜を侵食する。ごくりと喉が鳴る。そのまま肩を支える様にして、体を離して覗き込んだ顔。  焦点の合ってない瞳。尚もビクつく体。クロードの陰茎から、とろりと弱く漏れる白濁。  目に毒すぎた。あまりに焦らしすぎて甘イキしたのだろう、と言うことはわかる。分かるし、ダンテが確実に悪いのも分かる。  だとしてもこんな様子のクロードを見て、理性を保てるはずなんてなかった。 「ッ、ごめんクロード、酷くする」 「~~~ッ! ぁ、んぁッ、ンッ」  言うや否や、ダンテはクロードをベッドに押し付けた。角度が変わったせいで、新たな刺激が快感に変わったのだろう、ぴゅる、と弱く放たれた精液が腹を濡らす。それも気にならないくらい、ダンテは今、クロードを貪り尽くしたかった。  ナカをめちゃくちゃに抉る様に腰を打ち付ける。行き来する度に、ぐちゅぐちゅと酷い音がするのに止められない。  熱い。かわいい。きもちい。僕だけの。大好きなひと。果てるならアンタのナカがいい。  欲に浮かされて溶け合って、このままひとつになれたら、なんて馬鹿げた事を思う。そうすれば思考だって見透かせるのに。何でも埋めてあげられるのに。でも、ひとつじゃないからこそ、こうして肌を重ねられる。貪り尽くしても、なくならずに二人で明日を迎えられる。  嗚呼、でも。  回らない頭で夢見がちなことを考える。  離れていく姿は見たくない。僕をずっと選んで。離れないで。傍にいて。ずっと手を離さないで。お願い。  こんな事を思うのは、クロードに対してだけだ。他の誰も要らない。クロードさえ自分の元に帰ってきてくれるならそれで良い。  絶頂まで追い詰めて、イイ所ばかりを責め立てる。快楽を逃さない様に、少しの隙間も作らずに抱き込んだ。 「ぁッ、~~~っ!」 「っん、ッ!」  全てを搾り取るような収縮。耐えきれずダンテも達した。乱れた息を整える。大きく息を乱しているクロードを思えば、ここで止めるのが正解なのは分かっている。  しかし、まだ足りないと喚く本能が頭の中で喚いている。意地で黙らせて、クロードから体を離そうとした、その時だ。 「だんて、もう、おわり?」  微かな、しかし、確かなクロードの声だった。  涙でぐずぐずになった瞳で、ダンテを見ていた。  ゆるゆると動いたクロードの指先が、今ダンテの男根が居座っている丁度真上を、するりと優しく撫でる。どくり、と何処かで血潮が滾る音がした。 「もっとしよ、えんりょすんなよ、だんて」 そういってクロードが笑うから。 カケラほど残っていたダンテの理性は、見事に砕け散ったのだった。  

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