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メルト※

「ゆ……ひ……夕陽!」  夕陽が我に返る。ゴウが、心配そうに顔を覗き込んでいた。 「あ……ごめ……とんじゃった」 「え、うれしい。ちょっと休憩しよう」   朝からベッドにもぐりこみ、互いを求めあった。今日は一日中、そうするつもりだ。 「俺……セックスがこんなに気持ちいいなんて、知らなかった」 「よ、よせやい。お世辞かい?」  ゴウが、両手で顔を覆う。 「ううん、多分……好きな人とするから、かな」  今度は夕陽が、顔を覆う。ゴウはそれごと抱きしめた。 「もっかい、言って?」  耳元で、囁く。夕陽は小さく悲鳴をあげた。 「ふふっ。ホント弱いね、耳」  夕陽の耳を舌でなぞると、どんどん赤くなってくる。 「んっ……やぁ……」  体をよじって逃げる夕陽をゴウはもう、決して離さない。 「だーめ……いい?」  ゴウの問いかけに、夕陽はキスで答えた。  ゴウの屹立が、夕陽の入り口をなでる。誘うようにヒクヒクと収縮する動きに合わせ、先を挿入する。 「息、吐いて」  夕陽が息を吐くのを確認しながら、ゴウは自身を奥に進めていった。最奥に当たり、互いが交じり合う。 「全部、入ったよ」 「あ……んっ……おっき……ひあっ」  夕陽の中で、ゴウが一段と膨らむ。あ、危なかった。 「……待って。まだそういうの、言わないで」  ゴウが夕陽に覆いかぶさる。夕陽は、近くに来たゴウの頭を撫でた。 「ああ……幸せ。夕陽、好きだー」 「ふふっ……俺も、好き。だよっ、うあっ」  再び、ゴウが脈打った。 「……だーからー」 「今のもダメ?童貞なの?」 「言うねー」  ゴウが、腰を使い始める。最初はゆっくりと、中を味わうように掻き回した。 「あっ、あっ……んっ……んぅ」 「はぁ……きもちい?」 「ん……きもち……いっ、あんっ」  ゴウが夕陽の中に、ぷくりと膨らんだ果実を見つけた。そこをやさしく擦るように、身体を揺さぶる。 「あっ、やっ、そこっ……だめっ、だ、めだってぇ……」 「だめじゃないでしょ?くっ……こんなに、きゅんってなって……」  ゴウの言うとおり、その場所を擦る度に、夕陽が嬌声をあげる。 「あっ、あっ、あうっ……」  下肢に触れると、夕陽のそれがパンパンに膨れ上がって苦しそうだ。ゴウが優しく撫でてやる。 「い、やだっ……同時に、だめ……おかし……くなるっ!」 「いいよ……一緒におかしくなろ?」  夕陽の奥を激しく突く。コツコツとノックして、もっと奥に入りたいと震えているみたいだ。限界が近い夕陽は、ゴウにしっかりとしがみ付いた。 「あっ、あん、いっ、イく……いっ、ふあっ!」  震えながら、びゅくびゅくと白濁を放つ。同時にゴウを締め付けた。 「はぁっ、はあっ……んっ……はっ……」  夕陽が、胸を上下に揺らし、全身で息をする。目は潤んでいて、快楽にとろけきった顔でゴウを見つめる。耳まで真っ赤に染めて、愛らしい。 「ふー……うれしー。見つけちゃった」 「ふぇ?な、なに?」  また、軽くとんでいたのだろう。ゴウの言葉が理解できていない。ゴウが腰を揺らして、さ っき見つけた夕陽の弱点を軽く突く。 「夕陽のイイトコ」 「あっ、まっ、まって!お風呂、お風呂行きたい」  これ以上突かれたら、本当におかしくなる。そう確信した夕陽は、必死に懇願し、ゴウを風呂へ誘い出した。 「はぁ~」  2人同時に、ため息を吐く。湯につかり、疲れがどっと押し寄せてきたのだ。フローラル系の香りの入浴剤で、癒しの時間を楽しむ。 「……フォースさんと鹿野さん、大丈夫かな?」  鹿野は宣言通り、フォースを連れてこの施設から抜け出した。かなり下調べをしていたようで、逃げたこと自体、いまだに気づかれていない。 「大丈夫。バンビは狡いから」 「それ、褒めてないよ」  夕陽は、ゴウの腕に触れる。今は包帯を巻いてその上から防水処理をされているが、この下にはまだ痛々しい縫合の跡が残っている。何度も慈しむように、撫でた。 「夕陽……俺、余計なことしたよね」   色々な事が重なり、トドメに三嶋の暴走で施設内はひどく混乱した。その混乱に乗じてアリマが上手くうやむやにし、夕陽の拘束は3日で解けた。その日にアリマが「会わせたい人がいる」と、連れて行ったのが、夕陽の兄の病室だ。夕陽が意識を手放した後、ゴウが完璧に治療を施したのだ。  その結果、兄は、涙を流しながら夕陽に詫びた。なぜ自分があんなことをしたのか、自分なりに考えて、己の愚かさを悔い、懺悔の時間を過ごしていたという。それは嘘ではないらしく、数日間でひどく痩せていた。小さく見える肩を震わす兄に対し、もう恐怖心は無い。  それでも夕陽は許す事が出来なかった。失ったものは、戻らない。つけられた傷が、癒えることも、許したその瞬間に、母さんが元に戻るわけでもない。だから、一生許せない。そう、正直に兄に伝えたのだ。「すまなかった、取り返しのつかないことをした」と、ただただ謝り続ける兄に夕陽はボソリと「もう、恨んではないけど」と付け加えた。それを聞き逃さなかったアリマが満面の笑みになり、夕陽は少し恥ずかしかった。 「違うよ。それは俺の方だよ。ゴウさんにこんな怪我までさせて……」 「こら。それは言わないお約束だぞ?」 「うん。兄ちゃんの事、ありがとう。一緒に居られなくて、ごめんなさい」  夕陽はゴウに口づけて、ほほ笑む。ゴウは胸が締め付けられる。痛いくらいに、夕陽を抱きしめた。 「……明日だね」 「うん……」  明日、夕陽はこの施設を出ていく。アリマが人脈を駆使しても、ゴッドブレスに怪我を負わせたという事実は、どうにもならなかった。もう二度と、ここには戻ってこられないだろう。 「あーちゃんに、連絡いれるから」 「うん。俺も、先生の所に入り浸る」  通信手段は、アリマのプライベート用のスマホだけだ。セキュリティ上、医務室への持ち込みはできない。  せっかく想いが通じ合ったのに、もう離れ離れになってしまう。夕陽の目から、涙が零れる。 「あれ?ごめん……泣かないって、ふっ……これ、これ水滴!」 「ぶはっ!無理やりだなー」  ひとしきり笑った後、静かに見つめ合い、また、肌を重ねる。ずっと、忘れないように。

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