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第41話 触れ合いたい②
「凌駕さ……ぅ、ふ……」
両の突起を蹂躙するほど、ズボンの中で隆起した屹立が苦しい。脱ぎたい。凌駕に扱いて欲しい。
先端が下着で擦れ、それすら刺激になって透明の液が溢れ出る。
凌駕は見越したように脚衣を脱ぐよう促した。
ファスナーを下ろすと若干苦しさが緩和された。ボクサーパンツはすっかり濡れて色を変えている。布越しに触らずにはいられなかった。
「凌駕さん……凌駕さん……」
涙目で凌駕を見ると、彼も興奮して息を荒げていた。
『陽菜、全部見せて』
凌駕はスマホホルダーに固定し、下肢を晒した。中心で怒張している雄のそれが露わになっている。
画面越しにも血管が迸っているのが見え、陽菜はごくりと唾を飲み込んだ。
自分もスマホを固定すると、立ち上がり一糸纏わぬ姿になる。ソファーに座り直して両脚を目一杯拡げた
『ほら、やっぱり陽菜は綺麗じゃないか』
凌駕は全身を舐め回すように視線を這わせ、自分の男根を扱いている。
(僕で興奮してくれてるんだ。嬉しい)
陽菜も凌駕に倣って自分のものを慰める。凌駕がしてくれているみたいには出来ないが、お互い見られながらするのは興奮して感度が増したように感じる。
『後ろも弄って欲しいんじゃないのか』
「凌駕さんからされたいです」
『どんなふうに?』
「奥……奥まで、指を挿れて、中を拡げて……」
『俺がしてると思って、して見せて』
凌駕の言葉に抵抗すらせず、指を孔に宛てがう。
「あっ、んん……届かない。凌駕さんじゃないと……」言いつつ、孔はオメガの液でしとどに濡れている。指で掻き乱すほど卑猥な水音が鳴り、凌駕はこの音がもっと聞きたいと言った。
『陽菜の気持ちいい場所はもっと奥だな。体勢を変えた方が這入りやすいが……』
うつ伏せになり、腰だけを浮かせた体勢で挿れ直す。画角的に凌駕に孔を晒している状態になっている。凌駕にもっと興奮して欲しくて二本の指で肉胴を拡げて見せると、凌駕は感嘆のため息を吐き、低く唸った。
恥ずかしさは消え去り、快楽に身を投じる。アルファのフェロモンがなくとも、こんなにも欲情する自分に頭の片隅で驚きながら、手を止めることは出来なかった。
「イく……イキ……そう……はぁ、ぁっ……」
『陽菜、こっちに向いて』
陽菜は再び正面に向き直し、脚を拡げて屹立を晒す。扱く手の動きは苛烈を極め、もう片方の手で凌駕がよくしていたように先端に爪を立てる。
「あっ、んぁぁああっ!!」膨張した屹立から白濁が勢いよく吹き上がった。
腰を浮かせ、足先まで力む。飛沫した白濁がスマホの画面を汚したが、陽菜はしばらくその状態から動けずにいた。
呼吸の差で凌駕も絶頂に達したようだ。掌で受け止めた白濁を画面に映す。
陽菜が入院していた一ヶ月ほどの間、自慰すらしなかったのか、見ただけで濃いのが分かった。
あの精液を、自分の中で受け止めたかった。残滓を絞りながら、そんなことを考えた。
昂った欲情を放ち、ぐったりとソファーに横たわる。凌駕は無理をさせてすまなかったと言ったが、そういうわけではなかった。体力的にも無理はしていない。
行為が終わり、現実世界へと戻された虚しさに苛まれてしまっただけだ。
目の前にある小さな画面でしか凌駕を見られない。それを実感してしまい、「今すぐ会いたい」だなんて無茶な我儘を言いそうになっている自分を引っ込めるために、呼吸を整える時間が必要だった。
凌駕が甘えさせてくれる存在だからと言って、なんでも口にして良いわけはない。ましてや今すぐ会いに来て欲しいだなんて、本気で思っているわけでもないのだ。ただ甘えたいだけなら、もっと他にやり方があるだろうと自分に言い聞かせながら、スマホを手に取り画面を覗き込む。
凌駕はしっかりと陽菜と向き合い『必ず帰る』と言った。
まるで陽菜の心の内を悟ったのかと思うタイミングで、陽菜は目を丸くした。
『今すぐにでも飛んで帰って陽菜に会いたい。でもしばらくは無理そうなんだ。元々、業績が下がっていた支所だから、その立て直しを頼まれてね。俺じゃなくても誰かは行かなければならなかったんだ。ここが安定するまでは離れられそうにない。でも絶対に帰る。陽菜の許に、帰るから。信じて待ってて欲しい』
面と向かって言いたかったのだと付け加えた。
「はい、勿論です。僕には凌駕さんしかいないですから」精一杯を伝える。
凌駕も一瞬目を瞠り、そして微笑んだ。
明日も仕事が終わってから連絡すると約束をしても、電話はなかなか切れなかった。
『そう言えば』
何かを思い出した凌駕が突然話を切り替えた。
『陽菜の着替えの一切をクローゼットに揃えてあるから、明日にでも確認してくれ。陽菜がマンションから持ってきた衣類は俺が持ってきている。スーツケースから出していなかっただろ? 入院準備を頼まれた時に見つけたんだ』
陽菜も忘れていた着潰した部屋着用の衣類。この部屋で過ごすには似つかわしくないと思って隠しておいたのを、陽菜自身が忘れていた。
「Tシャツを持って行ったんですか!?」
『あぁ、これだろう? これが一番、陽菜の匂いが濃かったから』
「凌駕さん、巣作りをするのはオメガですよ……」
『アルファだって、オメガの匂いが好きだから構わないだろう。クローゼットの服もいっぱい着て匂いを付けておいてくれ』
当たり前だと言わんばかりの返答に、思わず「は、い……」と頷く。電話を切る間際になって虚を突かれた顔を見せてしまったが、凌駕らしいと言えばそうだと思い直す。
寝室へ向かう前にウォークインクローゼットに入り、思い切り鼻から息を吸い込んだ。ここは凌駕の香りが満ちている。入り浸ってしまいそうだと自嘲する。
何着か手に取り寝室へ移動すると、それらを抱えて眠った。
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