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第56話 忘れない記憶②

「凌桜たちが帰って来る前に、キスがしたい」  ストレートに感情をぶつけるのも相変わらずだ。陽菜も無言で頷いて、唇を寄せた。 「んっ……」五年ぶりの凌駕の感触。今までずっと押さえてきたフェロモンが暴走しそうになる。きっちりと蓋をして封印していた記憶の引き出しが、一気に開かれていく。  体は凌駕を忘れていない。再び与えられた大好きな人の温もりが染み渡っていく。 「陽菜……」凌駕の熱っぽい声に本能が反応してしまう。キスだけじゃ足りない。もっと触れて欲しい。でも凌桜たちもそろそろ買い物を終える頃だ。欲情してはいけない。どうにか平常心を保とうとするが、凌駕からのキスはどんどん官能を帯びていく。 「凌駕さ……ぁ、ここでは……」 「陽菜の匂いが濃くなってる。俺を求めてくれてるのに、我慢などできない」 「でも、止まれなくなる」 「分かっている。分かってても、陽菜を目の前にして、本当は直ぐにでも抱きしめたかったんだ」 「僕も、凌駕さんの匂いも体温も忘れられませんでした」  舌が絡まり、それ以上は喋れなくなった。無我夢中で互いの唇を求め、Tシャツの裾から凌駕の手が侵入すると、背中を愛撫される。大きな手が這い、やがて胸へと到達すると、指先で胸の突起を刺激される。あられも無い声が漏れる。凌駕は「この可愛らしい声が聞きたかった」と更に責める。  陽菜の中心は芯を通し始め、オメガの本能が疼き出す。  その時、陽菜のスマホに一件のメッセージが入った。母からだった。 『幼稚園のお友達と偶然会って、みんなでカラオケに行くことになりました。二時間ほど遊ばせてきます。ごゆっくり』  凌駕は「気の利くお母様だ」呟き、寝室の場所を訊く。 「二階に上がってすぐの部屋」 「今のうちに移動しよう」  陽菜を抱えたまま、階段を登る。その間にも凌駕の色香に当てられ体が熱を帯びていく。たった数秒の移動がもどかしく感じるほど、早く絡まりたくて焦ったい。  部屋に入ると念の為に中から鍵をかけ、ベッドに傾れ込んだ。つい最近まで凌桜と二人で寝ていたセミダブルのベッドも、今では陽菜が一人で使っている。凌駕とでは少し狭苦しい。でも今はこの狭さで良かった。隙間もないほど、凌駕と密着したい。  互いに自分の服を脱ぎ捨てた。肌が直接触れ合っただけで、電流が流れたみたいな感覚を覚えた。心地良い凌駕の体重。擦れ合う屹立、絡まる脚。もう、何も遠慮する必要もなくなった。 「凌駕さんと、早く繋がりたい」  長い発情期から明けたばかりだ。孔はそれほど締まっていないはず。それでも凌駕の男根は這入らないかもしれないが、キツくても中で凌駕を感じたい。一刻も早く、夢じゃないと実感したい。  凌駕の中心で怒張してる雄のそれも、先端から先走りの透明の液が滴っている。

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