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第57話 五年ぶりの①

「あまり煽らないでくれ。陽菜の大切な体を傷付けられない」 「でも、凌駕さんだって苦しそうですよ。見てください。ここが、満たされたくて疼いてます」  以前の自分なら絶対にこんなポーズは撮らないが、人は切羽詰まれば何がなんでも手に入れたくなるようだ。脚を目一杯拓き、孔を晒す。オメガの液が溢れるそこは、凌駕を受け入れたくて戦慄いている。少しくらい苦しくても、その痛みが現実だと教えてくれるなら、そのほうが良い。  陽菜は起き上がると凌駕を押し倒し、反り立つ男根の先端の真上で中腰になる。そして凌駕の肉茎を掴むと、先端を孔に宛てがう。 「陽菜、待て、まだいけない」 「だめです。もう、待てない……んんっ、ふぅ……んぁ」  肉胴に亀頭が飲み込まれる。凌駕が眉根を寄せクッと呻った。 「這ってくる。凌駕さんのが……あ、おっきい……ぁ……ぁ……」  緩く揺らしならがら法悦となり、腰を下ろしていく。しっかりと解れていない孔にはすんなりと奥には到達しない。けれども無理矢理、隘路を押し広げられる感覚に、体は随喜に震えている。凌駕に晒している自分の屹立からは先走りの透明の液が滴り、凌駕の下腹を濡らしている。  深い呼吸が出来ず、短く「はっ、はっ」と息を吐く。口を閉じられなくて、吐く息と同時に涎が零れる。そんな痴態を晒しても、最奥の寂しいポイントを貫いてほしい。強く突き上げて、熱い蜜をぶち撒けて欲しい。上品なんかじゃなくていい。凌駕になら、どんな風に扱われても構わない。  このオメガの本能を満たし、熱が鎮まるまでぐちゃぐちゃに抱いて欲しいのだ。  なかなか奥まで這入らない男根に痺れを切らしたのか、凌駕は突然陽菜の腰を両手で鷲掴みにした。 「もう、俺も限界だ。すまない、陽菜」言いながら、真下からガツンと音が鳴るほど腰を押し込まれた。 「んぁぁあああっっ!!!」  思わず背中を弓形に撓ませ、首も反らせる。同時に、陽菜の中心から白蜜が迸った。  凌駕の腹部にはたはたと白濁を飛沫させ、絶頂に達した。  孔から疼痛がじんわりと広がる。最奥まで届いた凌駕の男根を自分の体の中で感じ、足先にまで快感が奔流する。凌駕に跨り脚を拡げたまま、腰が痙攣する。陽菜の中に這入った男根は気持ちいい部分を押し続けて刺激を与え続けていた。  凌駕も打ちつけた状態で気持ちいいのか動かそうともしない。息を噛み殺し、ただより奥へ侵入させようと腰を押し込むのに集中していた。 「あ、凌駕さ……奥……這入っちゃ……」  子宮に届きそうなくらい体の奥に凌駕の存在を感じる。 「あぁ、もっと奥まで這入りたい。陽菜の中は今も変わらず暖かくで気持ちいい。いつまでもここに居座りたくなる」  グリグリと先端でピンポイントを押さえられ、陽菜の中心は再び芯を通し始めた。 「凌駕さんと、ずっとこうしていたいのは、僕も同じです。また一つに繋がれる時が来たなんて夢みたいで。夢……なのかな。こんなにも幸せな夢なら、覚めてほしくない」 「夢であるものか。現実だと、今からしっかりと示してやる」  体勢を変え、陽菜をベッドに寝かせる。足首を掴み、Vの字に広げると、ゆっくり男根を入り口まで引き抜き、一気に押し込んだ。 「ぁあっ!! んぁっ!! そこ、だめ……」 「待てないと言ったのは陽菜だ。俺はもう、陽菜の中を俺のものでいっぱいになるまで止まれない」  凌駕は激しく律動し始める。結合部からオメガの液が飛沫され、二人の腿を濡らす。  腰を打ちつけるたびに卑猥な音が寝室に響き渡る。陽菜も我慢せず喘ぐ。夢中になりながらも限られた時間でどれだけ満たし合えるかを考えてしまうのが嫌だった。  以前は夜中抱き合っていた。終わる頃には陽菜は腰が砕けて動けなくなる日もあった。  そんな絶倫の凌駕が、果たしてたったの二時間で満足できるのだろうか、いや、その前に自分はどうだ。一度解放してしまった凌駕への気持ちを、もう一度押さえ込むのは不可能だ。全身を凌駕の白濁で汚して欲しいくらい欲している。浴びるほど自分の中で果てて欲しい。  快楽の波に抗っている場合ではない。  腹の奥で燻り始めたあの懐かしい感覚。凌駕と離れている時は忘れてしまっていた。  同じところを絶えず責められ、尿意に似た感覚を思い出す。  (あぁ、そうだ。これは……) 「陽菜、射精()るっ!!」律動が苛烈を極め、凌駕が熱を放つ……。と、同時に陽菜も盛大に啼きながら潮を噴いた。  狭いベッドを大量の水分が濡らしていく。  孔が痙攣しているが、凌駕はまだ収まらないらしくもう律動を再開している。 「あっ、はぁ……まだ、出てる……」  突かれるたびに潮が溢れだす。 「絶頂に達しながら突かれるの、前から好きだったよな」 「好き……気持ちい……凌駕さんに、突かれるの、好き……」  まともなセックスなんて凌駕と離れてからしたことはない。五年以上ぶりの情交で、こんなにも淫らに溺れている自分に酔っている。  虚な眸で、凌駕を見る。もっと乱れたいと訴える。  凌駕は時計をチラリと確認した。思ったほど時間は経っていなかったのか、ふっと笑みを溢し「もう一回だけな」と宥めるようにキスをした。

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