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第59話 再会パーティー①

 翌日、凌駕が帰る際は凌桜が泣いて離れなかった。 「パパ帰ってきたって言ったじゃん」 「凌駕、すぐに住めるわけじゃないんだよ。それに、ここに四人は狭くて無理だよ」 「でも昨日は居た」 「そうだけど……」  昨日という日が楽しすぎて名残惜しいのも頷ける。なにも陽菜だってさみしくないはずもない。  凌桜を宥めながらも、お迎えの車が来なければいいのにと、思ってしまうのだけは許して欲しい。 「凌桜、今日は仕事に行かないといけないが、良ければ皆で一緒に住む家を建てないか? ママも守れる大きくて強い家を」 「え、お家? 建てたい!」  凌桜が瞳を輝かせる。 「よし、決まりだな。次に会う時までに、どんなお家が良いか考えておいて」  凌桜の前でしゃがみ、頬を撫でる。 「あと、今度は俺のマンションに遊びに来ないか? 美味しいご飯を食べたりするのも良い」  凌桜は一層、目を大きく開き「やったー」と喜んでいる。 「凌駕さん、そんな約束良いんですか?」 「泊まりに来て欲しいのも事実だし、なにも凌桜だけに来いなんて行ってない。勿論、陽菜も来てくれるだろう?」 「……行きたい、です」 「決まりだな」言いながらハグをする。  やがて迎えの車が来て、凌駕は仕事に帰って行った。「行ってきます」と言って車に乗り込む彼を、三人で「行ってらっしゃい」と見送る。  この度はちっとも寂しくなかった。それは凌桜も然り、次に会う時までの宿題だって出されたからむしろ張り切っている。  その日から「ママ、どんなお家がいいかな」が口癖になっている。  凌駕は約束通り、一ヶ月も経たない間に凌桜を自宅マンションへと連れて行った。  というのも、黒川や高槻も陽菜に会いたがってると言っていたのも本当で、黒川の経営するレストランを貸し切ってパーティーをしようと誘われたのだった。  そんな華やかな場所に着ていく服なんて持っていないと言うと、全員分の服が届けられた。 『畏まるような場ではないから、身構えなくてもいい』との事だったが、すっかり主夫業が板に着いたこの頃では、パーティーなんて言葉すら縁がない。凌桜は服が届いてから何度も試着して鏡の前に立っている。ドレスアップすると、幼さがなくなり、本当に小さい凌駕みたいだ。  もしかすると、凌駕は自分が子供の頃に着ていた服に似たものを選んだのかもしれない。  当日、凌駕が家まで迎えに来てくれると、凌桜を見てやはり自分の生き写しのような姿に満足気な笑みを浮かべた。 「パパ、リョウかっこいい?」 「カッコよすぎて見惚れていた。今日は人気者ナンバー1で決まりだ」  凌駕の言葉に終始ご機嫌の凌桜は、レストランの入口から凌駕と並んで入り、瞬く間に会場の視線を奪った。 「そっくり!!」 「凌駕の小さい頃を思い出す」 「小さい社長だ」  口々と言いながら距離を詰めるのは、凌駕の母と姉だ。陽菜も一緒に紹介され挨拶を交わす。凌駕の家族に会うのも初めてだった。 「父も後で顔だけ出すと言っていた」 「はい。承知しました」 「気負わなくていい。リラックスして」 「こんなに人が集まる機会とは無縁の生活だったので」もとより凌駕の家族もいるなんて聞いてない。そりゃ凌駕との子供を連れて来るのだから、当然と言えばそうなのだが……。  既に人に取り囲まれても物怖じせず対応している。これは日頃、母がパート先である介護施設に連れて行ったり、陽菜の病院に付き添っているから。凌桜はどこまで行っても人の注目を集める。  集まってきた人達それぞれと向き合うのも、とても器用だと陽菜は感心している。これも凌駕の遺伝だと言われれば頷ける。  凌駕と凌桜が並んでいるのを、少し離れた場所から陽菜は見ていた。感慨深い。夢みたいだ。奇跡が起きた。そんな風に感じながら、泣くほどでもないが、少し目頭が熱くなった。  またドアが開き、懐かしい人たちが入ってきた。目が合うや否や、陽菜の許へと駆け寄る。 「陽菜鳥!!」 「高槻さん!!」  陽菜も嬉しくなって満面の笑みで返す。 「会いたかったぞー!! 本当に、陽菜は突然何をしでかすか予測不可能だからな」 「ごめんなさい」 「こうして会えたから全部許す!」  二人でガッチリと抱き合い、思い出話に花が咲く。あっという間にあの頃に戻れる。  話に夢中になっていると、今度は黒川と啓介が会場に現れた。  

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