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第61話 番契約①
移動中の車の中はやけに静かだった。
出発した時はリラックスして話していると思っていたが、結局はどちらも上の空で会話が噛み合っていないと気付き黙り込んでしまった。
しばらく窓の外に流れる景色を眺めたり、音楽を聴いたりしていたが、ふと、凌駕が手を差し出した。
その上に手を乗せると、軽く握り返してくれた。
言葉はなくても、触れているだけで安らげる。肩の力を抜き、背凭れに体を預けた。
凌駕は発情期中、外に出かけなくても良いように、食材やシーツ、タオル類のストック、お風呂で安らげる入浴剤や、着替えに至るまで先に準備を整えてくれていた。
冷蔵庫には、水やスポーツドリンク、フルーツジュースやゼリーがびっしりと並べられている。
「こんなに沢山用意するの、大変でしたよね」
陽菜が目を丸くして言うと、「発情期が待ち遠しくて、気付けばこうなっていた」と話す。
以前の凌駕なら「大したことない」と言っただろうに、人はこんなにも変わるものなのかと驚いた。
「他に必要なものがあれば、今のうちに買ってこよう」と言い出したので「充分です」と慌てて返事をした。
「まだ余裕がありそうっだな。軽く食事をとっておくか」
「はい。本格的に発情期に入ると食欲も無くなってしまいますので」
凌駕は座って待つよう、陽菜に言い、キッチンに立つ。
手際よくご飯を作る凌駕の姿をリビングのソファーから見ていると、初めてここに来た日のことを思い出した。
「なんだか、懐かしいですね。こうして凌駕さんのマンションで二人で過ごすなんて」
「初めての日は、実は少し緊張していた。勢いで連れてきてしまったが、またヒートに当てられて襲いでもすれば、今度こそ信用を失うと思って必死だった。まぁ、結果的に襲ったようなものだったけど」
「凌駕さん、あの日の夜、抑制剤を飲んだのは僕と体の関係にはなりたくないからだって思ってました」
「まさか! 昼間に酷い態度を取っていたし名誉挽回しようと頑張ってたんだけどな。考えすぎだったか」
「今なら話せることって結構ありますよね」
「確かに。俺も陽菜の前でカッコつけてた部分もあるよ。今は本当に安らげる人だけど」
「僕なんて、ずっとドキドキして緊張して大変だったんですからね。凌駕さん、かっこいいかと思えば嫉妬は凄いし」
凌駕は高槻のスキンシップの多さは未だに認めていないと、皿を運びながら言う。
「パーティーの時だって陽菜に抱きついていた」
凌桜や他のパーティー客と話していたと思っていたのに、しっかり見られていたことに驚愕としてしまう。
いただきますと手を合わせ、食べる前に凌駕から触れるだけのキスをされた。
「陽菜にキスできるのは俺だけだと思って耐えてた」
「キスもその先も、何もかも凌駕さん以外の人とは出来ませんし。大体、高槻さんとキスしたいなんて考えたこともありません。僕がこういうことをしたいと思うのは、凌駕さんだけです」
凌駕の作ってくれたフレンチトーストを頬張りながら言うと、凌駕はカトラリーをテーブルに置き、頭を抱えていた。
「凌駕さん、食べないんですか? とても美味しいですよ」
「……陽菜。俺はいいから、早く食べ終わってくれ。じゃないと今すぐ寝室へ連れて行ってしまう」
「待って、待ってください。気が早すぎですよ。発情期だって本格的に入るギリギリにならないように、余裕を持って行動してるんですから」
「別に発情期でなくともセックスはできる。二人の時間は長いほどいい」
凌駕は陽菜の背後から腹部を抱きしめ、背中に凭れる。こんな風に待たれると気が気じゃない。手持ち無沙汰の凌駕は、陽菜の腹を両手で撫で、そのうちTシャツの中に手を入れ、直接撫で始めた。
耳許で「細い」とか「まだ?」とか喋られ、どんどん集中力が削ぎ落とされていく。遂に頸にキスをし始め、くすぐったさに肩を竦ませると、ヒートアップしていく凌駕は首を舐めながら乳首を弄り始めた。
「ぁっ、んん……凌駕さん、まだ途中」
「いいよ。陽菜は食べてて。俺も好きに過ごして待ってるし」
言いながら、首に舌を這わせ、耳朶を甘噛みし、耳を舌で嬲る。
両の乳首を擦られたり抓ったりしながら、片方の手は下に滑らせる。まさかとは思えば、そのまさかだった。
ズボンのぽたんを外し、前を解放する。下着の上から陽菜の肉茎を指先で撫で、先端に刺激を送る。
「はぁ、あぁぁ、や、ぁあ……」
カシャンと音を立ててフォークをテーブルに落としてしまった。
「ほら、しっかり食べないと。これからは体力勝負だから」
「ひゃっ、だって、凌駕さんが」
「俺が何? 俺が何してるか教えて?」
「ち……乳首を、捏ねて」
「うん、それで?」
「下を……」
「下って何?」
「僕の、性器を……触って」
「性器って、これ?」
下着の中に手を入れ、すでに先走りの液で濡れている屹立を見せつける。
指で透明の液を指で塗りつける。陽菜の中心はみるみる固くなり、反り立った。
「陽菜、食事中だというのに勃たせている」
「それは凌駕さんが触るから」
「嫌ならそう言ってくれ」
「……嫌じゃないから困ってるんです」
陽菜は完全に食べるのを諦めた。まだフレンチトーストが半分残っている皿を眺めながら、凌駕から施される愛撫に意識を向ける。
凌駕は勝ち誇ったように口角を上げ、陽菜の下着ごと脚衣を脱がせると腿を足で抑えて全開にさせた。そのまま後ろから屹立を扱く。
もう片方の手を孔に回し、中指を挿れた
「いきなり激しくしないで……やぁぁぁ、ゆっくりして、凌駕さ……」
「しかしこうしていると、陽菜の匂いがどんどん濃くなってくる。本当はもっと求めているんじゃないのか」
屹立を扱く手が上下に動くリズムに合わせて腰を揺らしてしまう。孔に這入っている指が中を掻き乱し、卑猥な水音を奏でた。
凌駕と会っていない間、自慰もしなかったので、少しの刺激でも鋭敏に感じてしまう。
「凌駕さん、イく。イッちゃう!!」
指で気持ちいいポイントを押し込まれ、陽菜は腰を撓ませながら白濁を迸らせた。
何度か痙攣しながら吐精し、凌駕に凭れかかると、腰に硬いものが当たった。凌駕の男根も完全に勃っている。陽菜は生唾を飲み込んだ。この熱塊が欲しい。本能的に思った。
双丘を凌駕の男根を服の上から押し付けると、割れ目で挟んで揺する。
「どうせなら、凌駕さんの大きいのを挿れて欲しいです」
「陽菜、そこまで煽ったなら、覚悟しておけよ」
蠱惑的な眼差しにぞくりと肩が戦慄く。凌駕は陽菜を抱き上げ寝室へ移動した。
これから、番になるまできっと止まらないと思うと、陽菜のフェロモンはより甘さを増した。
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