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六章・賭け試合の末に④

「ルキノくんとの婚約を賭けた試合を行うんだよ。もちろん騎士道に乗っ取り公平に行われる試合だ。私は先代国王とはいえ、今はただの魔法薬店の店主だ。決めるのは君たちに任せよう」 「……公平とはどうするのですか?」 「三人には誓いを立ててもらう。エイリーク君とオライオン君のどちらか一方、勝利した方と婚約することを契約に乗っ取り誓うんだ。そして試合はオライオン君の病の治療が終了してからとする。そうでなければ公平とはいえないからね」 「つまりそれまで婚約披露パーティーを延期しろと?そして勝ったほうがその婚約披露パーティーでルキノとの婚約を宣言できるということですね。……わかりました。その話を受けます」  エイリークが即答する。オライオンも了承するように頷く。  以前ルキノを手にするためならなんでもすると言っていたエイリークの言葉を思い出した。  ルキノだけが怖がっている。二人が怪我をするのは見たくはない。それに万が一オライオンが負けてしまったら……。そんな不安に駆られてしまい頷くことができなかった。  迷っていると、オライオンの手がルキノの手を包み込んでくれた。視線を向けると、励ますように頷き返してくれる。 (そうだよ。僕がオライオンのことを信じてあげないと駄目じゃないか)  一度大きく深呼吸をすると、ローディンの緑の瞳を見返す。彼もゆっくりと頷き返してくれた。  ここまでお膳立てしてもらって無理だとは言えない。 「お願いします。僕も全力で研究を行います」 「うん。それじゃあ決まりだ。試合開始はオライオンくんの病が治ってから一週間後にしよう。早い開催ができることを祈っているよ」  三人はローディンに向かって大きく頷いてみせた。ずっと黙って見守ってくれてレオナルドへ視線を向けると、すぐに視線をそらされてしまう。けれど好きにしていいと事前に言われていたため不安になることはなかった。 「ではこの契約書に手を置いて」  ローディンが魔法を唱えると淡く発光する契約書が出現する。エイリークが一歩前に出ると契約書へと手を置く。続いてオライオンもその上に手を重ねた。  ルキノは大きく深呼吸をすると、恐る恐る手を伸ばす。契約が成立した瞬間覆すことはできなくなる。  薬を完成させてオライオンを治し、試合に勝った者と婚約することになる。怖い。けれど、愛する人と過ごす未来を手にするための最後のチャンス。  しっかりと手を重ねた瞬間、一際強く契約書が光り輝く。同時に三人の指に契約の模様が刻まれた。  後戻りは出来ない。  これはルキノの人生を左右する一世一代の賭けだった。

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