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六章・賭け試合の末に④

 ルキノは寝る間も惜しんでエリクサーの製造に力を入れていた。何千通りも存在する調合を繰り返し続ける。ときには薬品が爆発したり、暴走して部屋に花火が打ち上がることもあったが、軒並み研究は上手く行っていた。 『眠ったほうがいいんじゃないか?』 「平気だよ」 「いや、オライオンくんの言うとおりだ。少し眠ったほうがいい」  研究室にはオライオンとエイリークも居る。  変なところで意見の合う二人に苦笑いを向けてしまう。  オライオンはできた薬を試飲してくれており、今のところ回復の予兆はない。エイリークはオライオンとルキノを二人きりにするのが嫌なようだ。薬剤の準備なども担当してくれていて、とても助かっている。  エイリークがルキノを抱き上げようとして、オライオンがそれを阻止する。椅子に腰掛けたルキノを挟んで、取り合うように睨み合う。  困り果てたルキノが呆れを含ませたため息をこぼすも、睨み合いは止まってくれない。 「ルキノはどっちに連れて行かれたい?」  エイリークがルキノの手を取り、甲に唇を寄せてくる。怒ったオライオンがエイリークの手を払い、手の甲を服の裾で拭ってくれた。 『困らせるな』 「フッ、意気地なしの君は手も出すことができないんだろう」  からかうような口調のエイリークのことをオライオンが睨みつけている。相当怒っているのが伝わってきた。二人は相性がかなり悪いようだ。  それにこんなにうるさくされてしまうと眠るにも眠れない。 「二人とも集中したいから出ていってくれないかな」  思わずため息を吐き出す。  そうしたら、二人は悲しそうな表情を浮かべながらも渋々言うことを聞いてくれる。その間もエイリークとオライオンが言い合いをしていて、ルキノは呆れることしかできなかった。  静かになった研究室で薬草と睨み合いを続ける。ルーナディアから抽出した汁を混ぜてみたり、種をすり潰してみたりしているが欲しい効果はなかなか得られない。  前髪を掻き乱し、ひたすら頭を回転させる。ノートにメモを繰り返し、失敗してはバツ印をつける。何度も挑戦して失敗する。それでも諦めようとは思わなかった。  ルーナディアも少なくなってきている。  もう一度取りに行くという選択を取ることは難しい。 (もう少しだけ頑張ろう……)  夜になってもルキノは手を休めなかった。食事も取っている暇はない。エリクサーを生み出す作業はオライオンにもエイリークにも不可能だ。薬草学に長けたルキノだからこそできること。  今までは二人にできないことはないと思っていた。けれどそうではない。ルキノはこと薬草学に関しては国でもトップレベル。  だからこそ自分しかできないことをやり遂げたい。そしてオライオンに音を届けてあげたかった。

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